【舞台探訪】『聲の形』(原作):第2巻

【注意!】当記事では原作の内容の詳細について触れることになります。原作未読の方でネタばれを避けたい方はここから先へは進まないでください。

大今良時さんの漫画『聲の形』の舞台探訪の記事、今回は第2巻の紹介です。

聲の形(2) (講談社コミックス)

聲の形(2) (講談社コミックス)

 

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・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第1巻
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・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第4巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第5巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第6巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第7巻

■第2巻について

すべてに絶望して4月15日(火)*1を最期に自らの死を選ぶ決意をした将也。この世から消えるその前に硝子に謝っておきたい・・・。その一心で彼女が通う手話スクールを探し出し、ついに硝子と再会した将也は、その直前まで考えもしなかった言葉を彼女に手話で伝えます。
「俺とお前、友達に・・・なれるか?」

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(上)『聲の形』第2巻P.20より。

これは第1巻のP.114で硝子が将也に伝えようとしたメッセージのリフレインです。あの日の硝子の手話の形を憶えていて、今度はその意味を分かった上で同じメッセージを将也から硝子に投げ返したわけです。P.18~20の将也の台詞の合間にカット・インする映像は、将也の脳裏に浮かんでいたあの日の二人の姿。


いったい、いつから将也は手話を学んでいたのでしょうか?第1巻のP.179では中学生時代の将也が手話の本を手に取るシーンが描かれています。

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(上)『聲の形』第1巻P.179より。

周囲から孤立して生きるより他なかった将也は、いつしか自分がかつて同じ境遇に追い込んでしまった硝子のことを想う時間が増えていたのかもしれません。そんな彼があの日あの時、硝子が伝えようとした"聲の形"の意味を知りたいと願うようになったとしても何ら不思議ではありません。この世から消えてしまうその前に硝子に会ってお互いのこえで語り合いたい・・・。そんな将也の想いは期せずして叶うことになります。ただし死を前にした訣別の言葉ではなく、新たな心の紐帯を結ぶ生きるための言葉として。


第2巻では将也の友達となる永束友宏(ながつか・ともひろ)、硝子の妹の西宮結絃(にしみや・ゆずる)との新たな出逢いがあります。一度は止まるはずだった時間が再び動き出し、未来などなかったはずの将也の世界が次第に外へと開かれていきます。

 

■舞台探訪 『聲の形』(原作):第2巻
※各シーンの場所情報はGoogle Mapにまとめてあります。各々の場所を確認されたい方は、当記事末尾に掲載しているMAPを拡大してご覧下さい。

表紙絵
美登鯉橋 MAP 03
『聲の形』のコミックスの表紙絵は、毎回、その巻を象徴する場所を背景として左に将也、右に硝子の立ち姿が描かれています。将也の目線は一定ではありませんが、硝子は必ずこちら(本を手に取った私たち)を見ています。例外は第6巻で、この巻のみ将也の姿はなく、硝子がただ一人虚ろな表情で水底を眺めています*2。また最終巻である第7巻の裏表紙で将也と硝子の仲間たちの姿が初めて描かれるのも印象的かつ象徴的です。

さて第2巻の表紙絵は満開の桜に彩られた美登鯉橋です*3

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(上)桜満開の美登鯉橋にて。第2巻の表紙絵と合わせての撮影(2016/4/2撮影)。
(下)同じく美登鯉橋にて。第2巻の裏表紙のイメージで(2016/4/2撮影)。

*1:同じ曜日の並びから物語は2014年であると思われます。

*2:第6巻では物語の語り手である将也の意識が消失しているので、彼の姿も「消えている」訳です。

*3:美登鯉橋を含む四季の広場一帯は桜の名所として知られ、毎年大変な見物客で賑わいます。桜満開の土曜日の真昼にこの写真を撮影できたのは幸運でした。

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