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【レポート】けいおん!!×えいでん!!コラボ企画:出町柳の下のドジョウは転売屋の夢を見るか?

以下の記事は2011/6/12(日)早朝に発売された「けいおん!!×えいでん!!」コラボ乗車券購入の顛末記です。何のこと?という方は、こちらをご覧下さい。


けいおん!!×えいでん!!」コラボ企画 記念乗車券(表/裏)


叡山電鉄の創業以来ではないかという、途方もない数のファン(恐らく最終的には2,000人近く)が押し寄せた日曜早朝の出町柳駅。普段はひっそりと佇むこの駅舎も、この日の未明から朝にかけては熱気と興奮に包まれた異様な状況となっていました。それでも叡電職員の的確な判断と指示により、怪我人もトラブルもなく無事に6,000セットを完売したというのは、この手のイベントとしては大成功と言えるでしょう。

2011/06/12(日)朝4:35の出町柳駅。異様な光景・・・。


職員の方々にとっては前例のない初めての経験であったでしょうし、トラブルを未然に防ぐための防御策や不測の事態に備えてのリスクヘッジ、あるいは周辺住民への配慮など、クリアすべき課題は山のようにあったはずです。それらに対して怠りなく入念に事前準備を進めていたからこそ、事故やトラブルで発売中止に追い込まれるようなこともなく完売まで漕ぎつけることができたのだと思います。


当日は叡山電鉄職員の皆さん総掛かりで対応に当たったと聞きます。記念乗車券の現物が刷り上がって納品されたのは、なんと前日の16:00で、それから社員総出で検品と袋詰めを行なったということをtwitterで知りました。そんな一刻を争う緊迫した状況にあっても、並んでいるお客さんに「長いこと待ってもらって、ほんまごめんなぁ」と声掛けされる職員さんの姿には本当に感動しました。本当にお疲れ様でした。


切符には「2011年初夏」とあります。
「初夏」の文字はそこだけ強調するかのように吹き出し付きです。

ということは、映画公開までに第2弾コラボがあると期待してしまいますね。そして本当に第2弾があるなら、期間限定の完全受注生産で構わないので通販での受付を考慮されるとなお良いと思います*1叡電出町柳駅5:30集合という条件は、地元住民か前泊以外には絶対に参加できない過酷な条件ですし、泣く泣く参加を諦めた遠方のファンを否応なく刺激する転売屋が暗躍する元にもなります。


総発行部数の再検討と、1人当たりの購買セット数の上限見直し、遠方のファンへ向けての通販の実現等等等。今回の経験と実績を元に改善を加えれば、更に満足度の高いコラボ企画を実現できるものと期待しています。


以下は、当日の顛末記です。


2011年12月3日の『映画けいおん!』公開に向けて、叡山電鉄がコラボ企画として記念乗車券を発売するとの情報は、6/3(金)10:02に叡山電鉄の公式Twitterで唐突に発表された。

叡山電鉄の車両や幾つかの駅のホームは『けいおん!』のファンにとっては作品内にしばしば登場する「聖地」であり、その叡山電鉄が『けいおん!』とコラボレーションを始めたという情報は、「遂に本山が動いた!」と言わんばかりの驚きと歓喜の声でもって瞬く間に全国のファンの間を駆け巡った*2


発売される記念乗車券は厚紙に楽器型デザインをかたどった硬券で、その内の一枚は一日乗車券となっている。既出の版権絵ではあるものの、各キャラの姿もしっかりデザインに盛り込まれており、価格は1セット2,500円。1人当たり最大4セットまで購入可能。6/12(日)朝5:30に叡電出町柳駅にて整理券を配布し、6:00から発売を開始するというものだった。
叡電ニュース(2011年6月3日):「けいおん!!×えいでん!! 楽器型特別乗車券2011年初夏」の発売について


この報を見た時、私が一番に注目したのは商品に印刷されている『えいでん!!』のロゴマークだった。言うまでもなく『けいおん!!』の公式ロゴを模したものであり、使用許諾のない二次使用は違法になる。つまりこれは、制作側が叡電に対して正式に『けいおん!!』ロゴの使用を許可した証ということになる。

切符に印刷された「えいでん!!」ロゴ:ほぼ実物大


周知の通り、制作側は『けいおん!』の舞台背景が京都&豊郷であることを公式には認めていない。設定資料集などを見ても、周到にその情報は伏せられている*3叡山電鉄が『けいおん!』の舞台のひとつであることは、もはやファンの間では公然たる事実であったが、肝心の叡電はそれに対して一切無関心であるかのように見えた。それがここへ来て手のひらを返したような急激な熱の入れよう・・・。一体裏で何があったのだろう?と不可解に思っていたが、後の叡電の公式tweetで「2年前から企画を考えていた」とあるのを見て、およその察しがついた。叡電は無関心だった訳ではない。裏で慎重に企画を進めていたからこそ、表向きに公言することを控えていただけなのだ。


更に別のインタビュー記事では「昨年9月の京都府国勢調査のポスターにあやかった」とある*4
勿論、国勢調査のポスターは商品ではない。しかし叡電はこのポスターを全線全駅に各1枚ずつ張り出して*5、一部の駅では盗難に合うといった事態にまで直面している。恐らくそこで『けいおん!』人気の凄まじさをまざまざと実感したのではないか。従って叡電twitterでの発言は、他社の(例えば近江鉄道が成功したような)販売事例に気持ちを後押しされたという意味合いではなく、国勢調査のポスターが巻き起こしたファンの興奮を見て、長く温めていた企画に勝算の目途がついたことと、他ならぬこの京都で『けいおん!』とのタイアップが可能であることが分かったという二重の意味においてだと推察する。


話を記念乗車券に戻そう。発行部数は全部で6,000セット。この数が多いのか少ないのか、前日まではちょっと想像が出来なかった。仮に購入者全員が4セットずつ購入したとしても、1,500番までの整理券をもらえれば確実に入手可能である。私自身は、遠方在住で入手不可能な知人の依頼分を含めて、最大数の4セットを購入するつもりでいた。


問題は整理券の配布時刻である。
5:30という時刻は、都心部ならそれほど奇異なものではないかもしれないが、地方都市である京都ではこれは相当に早い。まして日曜の朝である。京都市バス・京都バス・京都市営地下鉄は、いずれも始発前の時刻でまだ運行していない。可笑しいのは叡山電鉄自身で、出町柳行きの始発は、修学院5:11発→出町柳5:18着である。私は修学院よりも更に北部に住んでいるので、この時点で叡電で行くという選択肢が消えた。整理券配布の10分前の到着では遅い。

更に阪急電車京都線の始発が河原町駅に到着するのが4:55。徒歩で四条大橋を越えて、出町柳駅行きの始発便に京阪四条駅で乗りこむ時刻が5:05。この電車が出町柳駅へ到着する時刻は5:10頃。これより早い時間に動いている公共の交通機関はない。これらを綜合した結果、電車始発組が一斉に出町柳駅にやってくる5:10より前に現地で待機していれば1,500番より後になることはまずないだろうと判断し、移動手段には車を使い、5:00前から出町柳駅周辺で待機する作戦を取ることにした。近隣にある24時間営業の有料駐車場の場所も前もって確認しておいた。


それにしても、この5:30という時刻はどこから出て来たのだろう。出町柳駅を利用する一般の人達の迷惑にならない時間帯を考慮してのものだと思うし、それはそれで(出町柳駅で発売する以上は)正しい判断だったと思うが、これでは地元住民か前泊者以外の購入は実質的に不可能である。同じ関西でも大阪から来る人でさえ整理券配布前の到着は無理だった。まして遠方の人達に至っては、指を咥えて見ている以外なかっただろう*6


以下、当日の私のメモに基づいて、時系列で流れを追ってみることにする。
6/12(日)
0:00
 
twitterハッシュタグ#kon_eidenを見ていると、随時、出町柳駅周辺の情報が上がってくる。これで様子を見ながら徹夜で自宅待機を決め込む。


0:45 
叡電の終電後、駅周辺に既に約50名程度の人だかりが出来ているとのこと。


1:20 
直前に警察が来たらしい。一旦、人だかりは散開したようだが、警察が撤収するや否や、すぐに人が戻ってきているという。この時点でまた駅周辺に約30名程度の人の集まりが確認されている。この頃から叡電側も安全確保を考慮し、駅員が出動を始めた。

 
1:40
普段の出町柳駅ではありえない光景が展開されている。深夜の暗がりの中で数10名の人々が歩道や車道に群がっている。歩道の上で寝ている者もいる。


3:30
ここへ来て「今300人程度集まってきている」との情報が上がってきた。他のtweetでそれに類した情報はまだない。RTもされていない。夜目での人数カウントは人によって大きな開きが出るので、300という数字が信憑性のあるものかどうか分からない。しかし事実だとすると、こちらの想像以上に人が終結してきていることになる。その直後、「危険と判断した場合は整列を早めることもある、との張り紙が出された」というtweetを見て、予定を1時間近く前倒しして早目に現地入りすることにした。


4:20 
下鴨神社の有料駐車場に車を止めて出町柳駅へ向かう。まだ仄暗い朝の路上に車やバイクが違法駐車されている。下鴨界隈の高級住宅地の脇に、およそ不似合いな痛車を何台も見掛ける。他府県ナンバー。仲間を募って前夜から車で京都入りしているのだろうか*7


4:30 
河合橋から出町柳駅が見える。思わず息を呑む。駅周辺にびっしりと黒山の人だかり。駅の南側入口から川端通にかけて溢れた人が自然発生的に列を形成しており、それが駅舎の南西角を曲がり北側のロッテリアの店舗横まで伸びている。
駅南の入口前へ行く。今、駅の中はどういう状態になっているのか、ぎっしりと人で埋め尽くされていて中を窺うことすら出来ない。

静かに山のように群がる人人人。誰も大きな声を出さない。それが目の前の状況とひどく不釣り合いな気がして、不吉にも"静かなる暴動"などという言葉が頭をよぎる。しかしその実態は、駅員が準備を始めたのでそれを見てわらわらと集まってきただけのようだ。


4:50
どこで待機したら良いのか見当がつかないので、先ほどの列の最後尾につく。ややあって列が動き出した。職員が「整列を早めることにします」と声掛けしている。これ以上は危険と判断したのだろう。すぐに駅南入口から京阪電車への連絡通路へ向かう階段を下りて、突き辺り右側の北出口へ向かう地下通路に通される。中ほどで列の動きが止まった。

袋小路であるこの場所は単に奥でUターンするだけのバッファ・スペースであり、私のいる位置から京阪出町柳駅改札口方面へ向けてまっすぐ列が伸びてゆく。


5:30
「大変お待たせしました!只今より整理券を配布します。購入されるセットの数だけ枚数を仰って下さい。また整理券を受け取られましたら、そのまま列から離れないで待機して下さい。列を離れられますと無効になります!」そのアナウンスがあって約15分ほど経って、ようやく整理券を4枚もらった。

番号はNo.387,388,389,390。先頭から約250~300人目くらいと推定していたので妥当な番号だと思う。整理券の裏にはコピー防止のためだろうか、可愛らしい判子が押されている。しばし発売開始まで待つ。私の前に並んでいる男性が、CUT誌の『けいおん!』特集号を読んでいたので思わずそちらに目が行く。ふとそこにJRの切符が(栞代わりに?)挟みこんであるのが目に付いた。恐らく帰路の切符なのだろう。「鹿児島中央~京都」と書かれていた。頭が下がる。私にここまでの熱意があるだろうか?


6:00
「お待たせしました。只今より販売を開始します!」瞬間、周囲がどよめく。しかしなかなか列は前に進まない。6:15くらいになってようやくじりじりと動き出す。すぐに止まってはまた1mほど動くを繰り返し、ようやく“袋小路”を脱して叡電改札口への階段を上がりきって、後ろを振り向いた時、ガラス窓の向こうの河合橋周辺に行列が出来ているのを見て仰天した。

どうやら地下の行列は、京阪出町柳駅改札口前をも突き抜けて最南端の出口からまた地上に上がり、そこからUターンして橋の方まで伸びてきているらしい。6:10の叡電公式Twitterによればその時点で1,700人を越えたと伝えている*8


6:40
ようやく販売場所のテーブル前に辿りついた。受付窓口を4箇所設けて駅職員が総掛かりで販売業務に当たっている。テキパキと無駄がない。整理券4枚と現金を差し出して商品4セットと交換。無事、入手完了。

警察が出動しているのでトラブル発生か?と思ったら、路上に違法駐車している車やバイクを取り締まっていた。その頃、行列は河合橋を越えて出町橋へ差し掛かろうとしていた。


7:00
駐車場に戻る。商品の検分。上質の硬紙に美しい印刷。私は印刷技術のことは全く分からないが、これはとても良い出来ではないだろうか?カラーの発色がとてもナチュラルで肌理も細かい。はっきり言ってこれを切り取って乗車券として使う気にはなれない。やはりコレクションとして大事に保管しておきたい*9


戦利品「けいおん!!×えいでん!! 楽器型特別乗車券 2011年初夏」(ほぼ原寸大)


帰宅して叡電の公式tweetを確認。8:40をもって6,000セット完売したとの最終報告を読んだ。販売開始から僅か2時間40分。単純計算で1分間につき37.5セットを売る超ハイペース。まさに疾風怒濤の如き勢いだった。

かんばい!!

今回、叡山電鉄の対応は、どれも時宜を得た適切な物で、終始誠実に対処されたと思っています。ただし約1割相当の商品が、遺憾ながら転売屋と思しき層に流れてしまったのは確かなようです。需要と供給のバランスが崩れ、市場経済の原理を越えて高騰する商品の取引を狙うのが転売屋の商売です。これを防止するためには、顧客が適正な価格で商品を入手できる状況を継続的に確保しておく必要があるのですが、今回のように増刷が難しい特殊な商品の場合、プレミアがついてしまうのは半ばやむを得ないのかもしれません。悩ましい問題です。


最後になりましたが、発売日同日から運行を始めた『けいおん!ヘッドマーク付き叡山電鉄の車両の写真をご紹介して本稿を終わりにします。
(※左側のヘッドマークの写真は、大きく拡大してご覧になれます)。

実はこのヘッドマークにも「けいおん!」ファンに対する叡山電鉄からの心優しい気遣いが込められていたのです・・・。

ヘッドマーク付き車両は、2011/07/31まで以下のダイヤで毎日運行します。
『けいおん!』ヘッドマーク取り付け列車時刻表(2011/6/13~7/31)
京都に来られた『けいおん!』ファンの方は、是非時間を合わせて御覧になってはいかがでしょうか。


P.S.
叡電公式Twitterの6/13付tweetの中に、今回のイベントを締め括るに相応しいこんな感動的な言葉を見つけました。

感謝の言葉を言いたいのはこちらの方です。本当にありがとうございました!


(2011/06/15 記)

*1:ただし今回も通販の可能性については事前検討されていたようで、「千葉都市モノレール」(「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の記念切符発売の実績がある)と事前に相談をしたと公式のtweetにありました。http://twitter.com/#!/eizandensha/status/78992573397598208

*2:昨年にも豊郷駅を擁する近江鉄道がキャラデザイン付きの記念切符を発売しているので、『けいおん!』と鉄道会社とのコラボはこれが初めてではない。近江鉄道の成功事例にあやかった「柳の下のドジョウ」ならぬ「出町柳の下のドジョウ」とうまいことを言った人がいた。ただし後述する通り、制作サイドが「叡山電鉄」と『けいおん!』 との繋がりを事実上容認したという意味において、私自身が受けた衝撃度はこちらの方が遥かに上だった。

*3:PSPのゲーム「けいおん! 放課後ライブ!!」の中には、5人が演奏する背景として京都市バスの「一乗寺下り松町」の停留所名がはっきり描き込まれているものがあり、100%統制が取れているという訳でもなさそうだ。なおその画像はこちらで確認できる。

*4:『けいおん!!』と叡電がコラボ! 楽器型特別乗車券の発売風景とヘッドマーク付き列車を見てきた:はてなブックマークニュース(2011年6月3日 14:32)

*5:この時、私は全駅のポスターを写真に収めるべく各駅マラソン乗車を敢行した。その時の記録は次のtwilogで確認できる。けいおん!!国勢調査ポスター探訪記:twilog(2010/09/10~09/26)

*6:そこが転売屋の目のつけどころだったのかもしれない。発売翌日の6/13(月)には某有名オークションサイトで600近い出品数が確認されている。全セット数の実に1割である!

*7:ここで見かけた痛車は、後に下鴨神社の駐車場に戻って来たら、ちゃんとそちらの方に移動してあった。

*8:後に当日の行列の流れを図示した画像をアップされた方がいた。まさにこの絵の通り!

*9:一日乗車券「ふわふわきっぷ」のパーツをはずした写真が公式twitterでアップされている。裏面にも一枚ずつシリアルナンバーが刻印されているらしい。手が込んでいる。