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【レポート】京都アニメーション・スタッフによる座談会:2011/11/03(その2)

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座談会:その1←  


司会:
石立さんは最近では『日常』で作画だけでなく監督*1も手掛けられました。作品作りにおいて大切にしていることは何ですか?


石立:
どうすればこの作品が面白くなるか?ということと、作品やキャラへの愛です。自分の所属している第2スタジオの入口には「愛」の文字が貼ってあります(笑)。作り手のエゴは入れたくないんです。その作品の物語や世界観をどうすることが一番良いのか、そのためのアイデアを捻り出すために四苦八苦しています。


武本:
『日常』はその辺のライブ感あったよね(笑)。


石立:
最初と最後で全然違いますもんね(爆笑)。「日常」は構成会議*2が二転三転、いや四転から六転くらいしました。あんな長いの今まで体験したことがない。シナリオに取り掛かってから構成をやり直したことさえありました。石原監督を初めてカッコいいと思いました(爆笑)。


武本:
あの人は、話をする時に人を指差す失礼な人だ(笑)。


石立:
いや、あれは個性でしょう(笑)。


武本:
でもリアルで指差さす人に会ったのは初めてだった(笑)。


司会:
けいおん!』について教えて下さい。どういったところに魅力を感じられますか?


石立:
最初に原作を読んだ時は少し懐疑的でした。これはどうすれば面白くなるんだろうと・・・。山田(尚子)監督が皆を引っ張っていったというのは大きいです。あと、これは女性だからということではないと思いますが、人を見る時の視点に彼女自身の視点がそのまま出てきていると思います。ちょっとマニアックな見方をする子だなと思うんですが、キャラクターのちょっとした仕草や振る舞いにどれほどの魅力が潜んでいるかを見事に掘り出してみせる。恐らく普段からそういう視点で人を見ているのでしょう。それが『けいおん!』という作品の魅力だと思います。


武本:
山田女史*3のキャラを見つめる視線は本当に凄い。あれは誰も思いつかない*4


木上:
実は今日ここに来る直前まで『映画けいおん!』の最終チェックをしていました。途中で抜けて来たんですが、最後まで観たくてここへ来るのが嫌だったくらい(笑)。映画の印象は「すごく可愛い」。山田監督のキャラへの想いが滲み出ている。作品作りで苦しんだ部分はあったと思いますが、そんな要素は一切見せない。しっかり泣けて感動できる。作画監督の堀口さんの仕事も素晴らしいです。本当に可愛い。


武本:
キャラクターが生きているというのはこういうことかと。「やられた!」と思いました。


司会:
プロのアニメーターになる前はどんな練習をされていましたか?


木上:
アニメーターの仕事は、何もない白紙の上にキャラを浮かび上がらせる作業です。毎日、学校から帰って夕食が終わったら寝るまで没頭して描き続けました。朝まで続いても苦痛じゃなかった。上達するためには、とりあえずいつも絵のそばにいる。絵に立ち向かう時間を沢山取る。そうすれば絵を描くために何が必要か分かってきます。そのための学校に通う必要はないんです。


武本:
自分は写真の模写やクロッキーで練習しました。その際、時間を決めて絵を仕上げていきます。最初は10分。それが出来たら次は5分。その次は3分で描けるように訓練します。それくらいやらなきゃダメだと入社してから気付きました。毎日ひたすらやりました。


司会:
お気に入りのキャラクターは誰ですか?


武本:
全員!(笑)


司会:
では一番好きな話は何ですか?


石立:
1番とか2番というのはないのですが、印象に残っていることはあります。自分が一番最初に演出を手掛けたのは『ハルヒ』で、長門と朝倉が戦う話*5だったのですが、どう考えても期限に間に合いそうにない。もうダメだと思って木上さんに「今晩徹夜します」と言ったら「いいよ」と返事を頂いたんです。その夜、木上さんは一旦帰宅された後に原付で会社まで戻って来られて、自分の横で本を読みながら終わるのを待っていて下さいました。明け方の4時か5時にようやく作業が片付いて、2人で朝焼けの中を歩いて帰ったことを覚えています。


木上:
記憶にないけど(笑)。


石立;
えー!?(笑)


木上:
しかるべき立場の人がちゃんと後輩をフォローできる職場、彼らが安心して仕事に立ち向かえる環境が京アニにはある。ちゃんとスタッフを育てて、もっと愛情を込めたフィルムを皆さんに届けていきたいと思っています。


司会:
京都で一番好きな場所はどこですか?


武本:
ジュンク堂(笑)。本屋にいると嬉しい。「これどうやって読もう」などと考えてしまう。あとお寺や神社かな。嵐山の辺りは風情があって好きですね。


司会:
実写とアニメの間で表現上の得手・不得手はありますか?


石立:
当然のことですが、アニメの良さは「絵」であることです。一方でそれが弱点にもなりうる。魅力も弱点も「絵」。「アニメでこれは出来ない」とは言いたくありません。観た人が観て良かったという印象に繋がるかどうかだと思う。弱点を克服しながら、どうやって人の心に残るものを作れるかですね。


木上:
絵であることは弱点ではなく特徴です。絵であるということは情報が整理されているということです。身近な例を上げると、石立さんの家の子供がTVの前に30分間釘付けになるのは『アンパンマン』なんですね。『アンパンマン』の何が素晴らしいかと言えば、絵が、情報が整理されている点です。つまり伝えたいものが明確であるということです。


司会:
いよいよ公開まであと1ヶ月となった『映画けいおん!』ですが、お薦めのポイントはどこでしょうか?


武本:
さっき言ったことの繰り返しになりますが、唯たちが生きている様を見てほしいですね。


木上:
TVシリーズが好きな方にとっては、『けいおん!』って感じを本当に楽しんでもらえると思います。


石立:
ファンの方にきっと喜んでもらえると思います。一本の映画としてご期待に添えるはず。


司会:
次回制作の作品のタイトルは?


武本:
これ言っちゃっていいの?(笑)近々発売されるアニメ雑誌に載るんじゃないかな?


司会:
ジャンルは何ですか?


武本:
キーワードに「み」がつくジャンルです*6


司会:
最後になりました。お一人ずつファンの皆さんにメッセージをお願いします。


武本:
朝から一日お疲れ様でした(笑)。私たちは面白いエンターテインメントを目指しています。当社作品を見て頂ければ嬉しく思います。


木上:
本日は遠方からお越しの方もいらっしゃると聞きました。これからも頑張りますので、京アニという会社を見守っていて下さい。


石立:
見て頂いた方に面白く楽しく夢を持った世界観に浸ってもらって、ああ見て良かった面白かった、明日も頑張ろうと思ってもらえるような、気持ちにプラスになるものを作っていきたいと思っています。


司会:
本日はありがとうございました。

(17:43終了)


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*1:クレジット上は「副監督」

*2:放映話のおおまかな流れを決めるための会議。普通は1~2回程度とのこと

*3:武本さんはこの時、そう呼んでいました

*4:誰も考えもしないような視点からキャラを見ているという意味

*5:サブタイトル『涼宮ハルヒの憂鬱 IV』のこと

*6:後になって分かったことですが、「み」のつくジャンルとは「ミステリー」のことで、2012年4月から放映された『氷菓』のことでした。