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【レポート】『四畳半神話大系』トーク・ショー:森見登美彦氏(原作)×上田誠氏(脚本)~宇宙、京都、四畳半~(その3)

(【その2】へ戻る)
その2←

■アンケートに答える

上田:
さて5話以降については、この後の上映会で実際に見て頂くとして、ここからは皆さんから頂いたアンケートに答えていきましょう。


Q:小津のモデルはいますか?

森見:
イメージの元になった人はいます。ライフル射撃部の時の友人で、お互いに相手の悪口を後輩に吹き込んでばかりいるような関係で(笑)。
クラブの裏ホームページというのがありまして、僕はそこに連載を持っていたんですが、そこで彼の悪口ばかり書くんですね。でもその裏サイトの運営者が実は彼であると(笑)。おかしいですよね。仲悪そうに見えて裏で手を握り合っているみたいな。クラブの中の人間関係の情報収集ばかりしているような男でした。


Q:作品を書く時に必ずすることはありますか?
森見:
上田さんは?


上田:
銭湯に紙とペンを持っていきます(笑)。森見さんは?


森見:
僕は前の日に書いたものを、もう一度最初からキーボードで打ち直します。物語が最後の方まで来ると段々大変なことになるんですけどね(笑)。


上田:
助走をつけるようなものですね。印刷して読まれるんですか?


森見:
プリントアウトは完成した最後の時だけです。途中の読み直しはディスプレイ上でやります。あとその他にやることと言えば、珈琲を飲むとか・・・。
大体の場合、文章を書いている時にアイデアが浮かんでくることが多いです。散歩もいいんですが、前に締め切りが迫っている時に散歩をしたら、締め切りのことばかり考えてしまって何もアイデアが浮ばなかったのでやめました。


Q:書く時、一番難しかったことは?
上田:
「福猫飯店」と「ほんわか」*1の書き分けです。悪のボスっぽい組織が2つある訳で、これをどう書けば良いのか、どういう関係にすべきか悩みました。


森見:
僕の原作では第5話に出てくるような自己啓発セミナー的なものは書いていないんです。でも湯浅監督がそっち方面にめちゃくちゃ興味があったみたいで(笑)。蜂でロイヤルゼリーと来たら宗教団体でしょうと、バチッと監督の中で繋がったらしいです。


上田:
「ほんわか」で1話全部やるのかーと思ってました。あの第5話はアニメ・オリジナルの要素が一番強いです。


森見:
自分がふわっと書き流したところを、うまく膨らませて頂きました。でも、これいいのかな?っていうくらい生々しさがありましたね。


上田:
ロイヤル・ゼリーを売ると団体の中でランクが上がっていくという設定なんですけど、監督の最初のアイデアでは、とある宗教団体の具体的なランク名と全く同じで(笑)、これヤバくないか?と思っていたら、案の定、変わってました(笑)。


森見:
教祖役の人がすごいですね。もう「そういう人」にしか聞こえなかった(笑)。


上田:
あれはうちの劇団員でプロの声優さんではないんです。森見さんが誉めてらっしゃったと伝えたら、すごく喜んでいました。


Q:どの話が一番好きですか?
上田:
第4話「弟子求む」ですね。


森見:
僕は今の第5話「ほんわか」ですかね。自分には出来ないものを膨らませているところが面白い。それと単純に主人公と小津が暗い森を逃げていくシーンがすごく良かった。

四畳半神話大系(第05話):夜の逃亡シーン


上田:
第4話は「闇鍋」のシーンで始まりますし、第5話は暗闇の逃亡シーンからなので、2話連続で暗い絵で始まるのはバランスが悪いんじゃないかと懸念していたんですが、監督は問題にすらしませんでした(笑)。

四畳半神話大系(第04話):冒頭の闇鍋シーン


森見:
闇鍋の場面は原作で書いていても面白かった。


上田:
会話だけで進むので小説との親和性が高いんですよ。(客席に向かって)皆さんの中で「闇鍋」したことある人っています?あ、結構いらっしゃいますね。あれって何のためにするんですか?(笑)


客席(女性):
罰ゲーム!(笑)


森見:
それは切ないですねぇ。僕は社会人になってから闇鍋を初めてしたんです。


上田:
社会人になってそんな反社会的なことを(笑)。


森見:
最初はいいんですが、あれは後になるほどドンドンひどいことになるんです。ひとたび灯りを点けるともうダメですね。工場の裏から流れて来た廃液みたいな色でなんかネトネトしてまして(笑)。暗闇なので相手が何を入れているのか分からないという怖さがあります。誰かがバキバキ何かを砕いて鍋に放り込んでいる音が聞こえるんですよ。実はチキンラーメンを砕いて入れているだけなのにもう怖くて(笑)。
樋口師匠が巨大な肉団子を齧ると、中からニョロっと出てくるところは絶妙の気持ち悪さでした(笑)。


Q:お互いの表現方法で自分にないと思うことは何ですか?

上田:
僕は脚本家であり演出家でもあるんですけど、舞台美術から作り始めることが多いんです。言葉に頼らないビジュアルや構成で作品を作っているので、森見さんのような饒舌な言葉での表現が羨ましくて憧れています。


森見:
僕は逆に構造がうまく作れない。無理して作っているようなところがあって、今も模索している最中です。上田さんの作品はカチッカチッと構成されているのが凄いです。


上田:
なんかお互いに持ち上げあっていますね(笑)。


森見:
逆に2人の共通点は「恥ずかしがり」だと思います。はにかむ?というか。


上田:
大のおとなの男が2人ではにかんでいるというのも・・・(笑)。
これをそのまま出したらまずいなという部分を僕は「語らない」し、森見さんは「饒舌に語る」という違いはありますね。


森見:
あの、最終話で主人公の「私」が走りながら裸になっていきますよね?あれは上田さんのアイデア


上田:
あれは違います!(笑)
最終話は小津が上から落ちてくるのを主人公が下で待ち受ける展開にしましょうと監督に言ったのに、もう、なんか裸になって空飛んでるんだからね!(爆笑) まさかこんなことになってるなんて想像もしませんでしたよ。でもこっちの方が見ていて気持ちいいので、最後のあの場面はあれで納得しています。


森見:
あれは湯浅さんだろうと思っていました(笑)。


四畳半神話大系(第11話):ラストシーン


上田:
えー、そろそろ時間が来たようです。この後、引き続き『四畳半神話大系』全11話のマラソン上映会が始まります。お時間のある方は是非ご覧になって下さい。本日はどうもありがとうございました。


森見:
ありがとうございました。
(15:07終了)


(【その1】へ戻る)
その1←


お二人の退場後、10分ほどの休憩の後、15:15~20:10頃にかけてアニメ『四畳半神話大系』全11話のマラソン上映会が始まりました。約5時間の長丁場でしたが、一気に通してみることでロジカルに組み立てられた構成と伏線が一層明確となり、この作品が紛れもない傑作であるということをあらためて再認識させてもらいました。
お二人のトークのみならず、このような形で全編見返す機会を得られたことは大変有意義な体験でした。


(2011/11/08 記)

*1:第5話に登場するソフトボール・サークル。善男善女の集まりのような集団が実は・・・という展開。