【舞台探訪】『氷菓』:■01 市街中心部(商店街、鍛冶橋周辺)

京都アニメーションのTVアニメ『氷菓』(2012年4~9月放映)の舞台探訪の記事です。

氷菓 限定版 第1巻 [Blu-ray]

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周知の通り、氷菓』は岐阜県高山市が舞台の青春ミステリです。原作は同市出身の米澤穂信氏の<古典部シリーズ>。アニメ版では、ヒロインの千反田えるの邸宅のみ、静岡県掛川市の加茂荘がモデルとなっています(※加茂荘のみ先行して探訪記事をリリースしています。以下の関連記事をご参照下さい)が、一部の例外を除けば基本的に高山市内に実在する学校・商店街・喫茶店・川・神社などがリアルに描写されており、舞台探訪や聖地巡礼に訪れた人の目を楽しませてくれます。


以下、全22話を11のエリア別に分けて順次ご紹介していきます。なにぶんカット数が膨大であるため、同じ場所やアングルは出来るだけ代表的なカットに絞り込んだ上で掲載します。全カットのコンプリート型ではありません。あらかじめご了承下さい。


【関連記事】
【舞台探訪】『氷菓』:千反田邸でお茶を ~加茂荘探訪記 (@静岡県掛川市)
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【レポート】:『氷菓』原作者:米澤穂信氏の一橋大学講演会レポート「日常の中のミステリ」(2012/11/4)


では今回は、■01 市街中心部(商店街、鍛冶橋周辺)をご紹介します。


■01 市街中心部(商店街、鍛冶橋周辺)
0P(第1クール)
01 商店街


望遠レンズがなければ同じように撮影することはできません。


02 同上(招き猫)


この人形は季節によって変わります。「招き猫」は通年は1~3月とのこと。この写真は10月に撮影したものですが、『氷菓』に登場したということで特別に設置されたそうです。


第1話
01 やよいそば


02 商店街


実はこのカットで奉太郎と里志は、01の場所から商店街をずっと南に下がった位置から北上しているのです。不思議です。


03 同上(北陸銀行前)


これは02の場所の更に南側から北上中です。


04 同上(カラオケハウスピコット前)


ここで鍛冶橋交差点の少し北の位置に戻って、再び南下します。かなり迷走していますね。


05 同上(ホテルα-1の駐車場前)


06 鍛冶橋交差点(横断歩道を南へ渡る)


07 同上(北向き)


08 同上(南東角の信号)


09 同上(南東角の「花水木」前)


10 同上


11 同上(横断歩道を西へ渡る)


第4話
01 鍛冶橋交差点(南東角を北側から見る)


02 同上(南西角から西向き)


03 No.01と同じアングル


04 同上(南東角から東向き)


第5話
01 商店街のポスト


02 同上


第9話
01 鍛冶橋交差点(南東角「花水木」前)




「花水木」さんは、高山バーガーの他にもガラス細工などの雑貨も扱っていらっしゃいます。店内はこんな感じ(店員さんの許可を得て撮影させて頂きました)。

こちらは「高山バーガー」。肉厚で美味でした。


第10話
01 鍛冶橋交差点(南西向き)


02 商店街(てながあしなが前を北へ)


03 同上(飛騨高山ウッドスタジオ前を南へ)


ここでまた02のカットとは反対方向(つまり南向き)へ向かっています。


04 同上(喫茶おさんぽ前を北へ)


今度はまた北向きに歩いています。迷走状態は続きます。







最後のキャプと写真に注目して下さい。実際の風景にはない電柱が中央に描き加えられています(或いは左側の電柱を中央に持ってきている)。現地でこの違いに気付いた時、画面を左右に分断するような位置にわざわざ電柱をもってきた意図が最初は分からなかったのですが、続く以下のカットを見てすぐに理解できました。


2つ目のキャプとほぼ同じ位置で撮影するとこうなります。

ご覧のとおり、このカットも電柱の位置を"作為的に"中央にずらして、左右を別の空間のごとく分割しています。その意図するところは恐らく下記の通りです。


第10話「万人の死角」でのこの一連のシーンは、入須冬実に推理の「才能」を買われ、自主映画の真犯人を特定する作業を依頼されたことへの迷いを吐露する奉太郎と、自分にはシャーロキアンとしての「才能」はなく、どんなことでも第一人者にはなれないと言い放つ里志との対話です。二人の資質の違いや、里志の中で奉太郎の「才能」や「素質」への嫉妬心が描かれる場面であり、二人の間の心理的な隔壁が露わになる瞬間です(この展開は、後の第15,16,17話・第21話への伏線となるものです)。


その二人の間に生じた確執を象徴的に描き出しているのが、意図的に位置をずらして描かれた電柱です。上掲のキャプだけでなく、是非、第10話を再見してご確認頂きたいところですが、奉太郎の「お前にはお前にしか出来ないことがあると思うか?」という里志への問い掛けに始まり、里志がこの場を立ち去るまでの間、幾度も二人の空間を分かつように電柱が挟み込まれます。まるでお互いの侵入を拒み合う"結界"のように、二人は電柱を越えて歩み寄ることが出来ません。このように二人の間に生じた意識のズレや齟齬、または里志の奉太郎に対する意識の隔たりを空間的に演出するために、電柱の位置は改変されたのだと私は解釈しています。


またアーケードの日陰に居留まる奉太郎と日の当たる場所へと出てゆく里志の描写も象徴的です。入須から託された謎の解明という呪縛に囚われてしまった奉太郎と、(自身の才能の無さに失意を覚えたとはいえ)いち早くそこから解放された里志のそれぞれの姿が、こちらは明暗と色彩によって対象的に描き出されています。


「現実の風景をモデルとした漫画やアニメの舞台背景において、わざわざ風景を改変して描く意図や理由を考察することは、時として作品の演出意図を探り出す行為と同義である」というのが私の持論ですが、このシーンはその分かりやすい一例と言えるでしょう。


第11話
01 商店街(市営駐車場)


アングルに忠実に撮影すると電柱が邪魔になります。劇中ではなかったものとして描かれています。

電柱の入らない位置で撮影するとこうなります。これに何か深い意図は・・・なさそうですね(笑)。


第18話
01 鍛冶橋交差点(北東角)




えるの頭の左側にあるのは電話ボックスなのですが、なにやら張り紙があります。これを拡大すると、

こうなります。ほぼそのまま描かれていることが分かりますね。また右側背後のだんごやの下にあるのは・・・

これです。この屋台のお店は場所柄もあって大層な人気店で、ひっきりなしにお客さんが集まってきます。




MAP

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次回は、■02 宮川周辺(宮川沿い、弥生橋、不動橋)です。


(2013/1/31 記)

当記事に掲載した『氷菓』の画像は、著作権法32条に定める比較研究を目的としての引用であり、当該画像の著作権は全て、米澤穂信角川書店/神山高校古典部OB会に帰属します。