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【小論】音楽視点で見る『けいおん!』の世界1 ~『映画けいおん!』BGMの元ネタ集あれこれ

小論 けいおん! 映画けいおん! 音楽

"音楽視点で見る『けいおん!』の世界"と題して、これから2回に分けて記事をリリースします。1回目の今回は『映画けいおん!』のBGM(※サントラCD未収録のものもあり)の元ネタになったと思われる音楽のご紹介です。

映画「けいおん!」オリジナルサウンドトラックK-ON! MOVIE ORIGINAL SOUND TRACK

映画「けいおん!」オリジナルサウンドトラックK-ON! MOVIE ORIGINAL SOUND TRACK

ネット上で既出の内容も幾つか含まれていると思いますが、全てに目を通している訳ではありませんので、中には当記事が初出のものもあるかもしれません。いずれにせよ、このような形で網羅的に紹介したものは比較的少ないのではないかと思います。BD&DVDやサントラCDで各場面のBGMを聴いてから、当記事のリンク先で元ネタを確認してお楽しみください。当記事が皆様の映画鑑賞の手引きとなれば幸いです。出来れば原典となった音楽にじっくり耳を傾けてもらって、そのアーティストに少しでも関心を持ってもらえるようなら、音楽をこよなく愛する筆者としては冥利に尽きます。


映画のBGMについては「映画けいおん!公式ガイドブック~桜高軽音部 Travel Diary」(以下「公式ガイド本」)の中で劇中のサウンド・トラックを担当された百石元さんがこのようなコメントをされています。

映画「けいおん! 」公式ガイドブック  ~桜高軽音部 Travel Diary~ (まんがタイムKRコミックス)

映画「けいおん! 」公式ガイドブック ~桜高軽音部 Travel Diary~ (まんがタイムKRコミックス)

百石 (山田)監督はまず「唯たちが日本にいるシーンは『けいおん!』TVシリーズの雰囲気を継承して、ロンドンでのシーンでは半日常的なロンドンに寄せた感じにしたい」とおっしゃっていました。ただ、ロンドンらしさといっても現代ではなく、80年代や90年代のUKを想定しているということだったんです。
(「公式ガイド本」P.115)

『けいおん!』の世界にロンドンという新たな視点が持ち込まれたことで、これまでとは違う音楽要素を入れようと当初から山田尚子監督が考えていた様子が窺えます。実際、ロンドン滞在中の場面で流れるBGMの多くが、実際に存在するブリティッシュ・ロックへのオマージュとなっており、そこに監督や百石さんの英国音楽への並々ならぬ情熱が感じられます。先の公式ガイドブックでの百石さんの発言には、他にこのようなものもあります。

百石 サントラは、音楽好きの人が聴くとピンとくる要素や仕掛けがあります。それも僕が皆様に「どうよ」と問いかけるつもりで作っているので(笑)、そういうものを見つけて楽しんでいただければいいなと思っています。 
(「公式ガイド本」P.116)

また音響監督の鶴岡陽太さんもこのように発言していらっしゃいます。

鶴岡 小森(茂生)さんや百石さんは、僕よりも上のジェネレーションで、50代バリバリの人たち。この人たちが手掛けているから、音楽が大人びていてグレードが高い。(山田)監督も百石さんと打ち合わせをするときに、YMOやクラフトワークみたいな80年代の僕が傾倒していた曲を話題に出されていて。だから劇伴もさりげない曲が多いけど、ぜんぜん子供臭くないんです。
(「公式ガイド本」P.108)

『映画けいおん!』の音楽が極めて確信犯的に作られていることがよく分かりますね。それにしても、50代のプロのミュージシャンと対等に70~80年代の音楽の話が出来る山田尚子監督の音楽フリークぶりときたら・・・。


当記事は、先日開催されたとある『けいおん!』オフ会の場で私が発表した研究成果のひとつです。制作に当たってはTwitterのフォロワーさんであるストレンジデイズさん(@strangedays_we )との意見交換の中で幾つかアイデアをいただきました。私の知らなかった曲もご教示いただくなど、大変お世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。


では本題に入ります。


1. OP「いちばんいっぱい」
(BD&DVD 0:05:42~)

Tom-H@ck 「けいおん!」シリーズのTV版オープニングのような派手な楽曲ではなく、ハイテンポというよりはミドルテンポ、ロックというよりはボサノバやジャズという方向性での楽曲を求められました。大まかなイメージとしては。「例えばステージ上で唯ちゃんが凄腕ミュージシャン達をバックに、その心地いいグルーヴ感の中でニコニコ楽しく歌っているような楽曲」「ロンドンっぽい雰囲気もある楽曲」などなど。そのようなオーダーを受けました(同曲の作曲担当)。
(「公式ガイド本」P.117)

百石 監督から「ヨーロッパのような雰囲気で」というオーダーをいただいたので、TVシリーズのオープニング曲にあるハードなイメージとは大きく違う、ほっこりした曲にしました(同曲の編曲担当)。
(「公式ガイド本」P.116)
 

ゆったりしながら、それでいてシャッフルの効いたリズムに乗った、ほんわかした暖かさに満ちたOP曲です。直前のDEATH DEVILのラウドな音が"偽OP"だったことが分かる瞬間であり、この映画で初めて『けいおん!』に触れた人には「『けいおん!』ってこういう世界なんだ」と思わせるに充分な楽曲ですが、実はこれもTVシリーズのOPとは明らかに異なる曲調。つまりTVシリーズからのファンにとっては"二重のフェイク"のような曲でした。


曲は"Penny Lane"や"All You Need Is Love", "Your Mother Should Know", "With A Little Help From My Friends"などの中期The Beatlesのテイストに溢れています。と言っても特定の曲がモデルだと言い切れるほどではありません。むしろ60年代半ばのこれらの曲から全体の空気を味わってみて下さい。代表例として"Penny Lane"と"With A Little Help From My Friends"を挙げておきます("Penny Lane"は、後ほど「唯の朝の散歩」のシーンでもう一度紹介します)。


"Penny Lane" / The Beatles

"Penny Lane"の1:11辺りから始まる間奏でのトランペットのフレーズは、「いちばんいっぱい」のCDの3:21、3:44辺りに色濃く反映されていると思います(BD&DVD では0:07:10~)。


"With A Little Help From My Friends" / The Beatles


2. 離陸:「あずにゃんムービング!」~「おー!くもぉ!おー!おー!」の辺りまで
(BD&DVD 0:38:32~)

百石 飛行機の離陸をイメージして、言わずとしれたあんな感じで(笑)!
(サントラCD:「#15.水浴び大好きあひるちゃん*1」ライナーノーツ)

ここで一気に場面が飛びます。先の百石さんの発言にもある通り、BGMがTVシリーズと趣きを変えるのはロンドン旅行中なので、ここまでは目新しい音が出てこないのはいわば当然の演出です。BGMが顕著にUKっぽくなるのは、ヒースロー空港到着時辺りからです。


"Love's Theme" / Barry White & Love Unlimited Orchestra

百石さんのコメントからも分かる通り、劇中のこの場面でBGM(#15)が流れてきた瞬間の反応は"笑う"のが正しいです。元ネタとなったこの曲はその昔(1970年代中~後半)、キャセイパシフィック航空のコーポレートイメージソングとしてテレビCMで盛んに流されていました。そういう訳なので、この曲を聞いて「なつかしー!」と身悶えするのは、間違いなく30代後半から40代以上の年季の入った方々です。曲名の日本語タイトルは直訳通り「愛のテーマ」で、45回転のシングル盤も発売されていました(持ってます)。


3. 機内:「あずキャット、機内食英語で?」~「お客様、和食と洋食どちらになさいますか?」の辺りまで
(BD&DVD 0:39:23~)

百石 監督から「もっとインチキ臭くして欲しいんです!」という注文を受けて何度か作り直した曲です。
(サントラCD:「#16.地中海楽団」ライナーノーツ)

"オリーブの首飾り" / ポール・モーリア グランド・オーケストラ

この曲はどういう訳かマジックショーのバックでよく用いられます。なんで手品でこの曲が?というのは長年の疑問だったのですが、今回調べてみて分かりました。奇術師の松旭斎すみえが昭和50年頃から自分のステージのバックに使い始めたことが始まりで、それが定番BGMとなって業界内に広まったというのが定説のようです。リンク先のWikipediaにもその旨の記載があります。ちなみにこの曲がマジックで使われるのは日本だけとのこと。
なんにせよインチキ臭い雰囲気には妙にぴったりです。いや勿論、曲自体は名曲ですよ。そこは誤解のないよう。


4. ヒースロー空港のタクシー乗り場~Hotel Ibis London City
(BD&DVD 0:44:06~)

百石 ロンドンの霧や冷たい空気が音楽で出せればいいなと思いました。実際にこの曲が使われたシーンも空港で彼女達が寒がっている場面でしたので良かったです。
(サントラCD:「#19.Air of Nortern Countries」ライナーノーツ)

これは非常に分かりやすいオマージュで、映画公開当初から話題になっていた曲です。


"Where the Streets Have No Name" / U2

百石さんは「ロンドンの霧や冷たい空気(後略)」と書かれていますが、元ネタとなったU2はイギリスのバンドではなく、お隣のアイルランド出身のバンドです。なお、同曲はテレビ朝日系「ニュースステーション」10代目のオープニングテーマ(2003/9/29 - 2004/3/26)に使われていたことがありますので、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。


5. 地下鉄Aldgate East駅~回転寿司屋「蘭鋳」
(BD&DVD 0:48:11~)

百石 この曲ではイギリスとインドの文化のつながりを意識して、後半でシタールを使いました。それと1分あたりから入るギターソロは逆回転で再生されたものです。
(サントラCD:「#20.London E」ライナーノーツ)

Aldgate East駅のホームで靴ずれを起こした梓。それに気付いた唯。ここで彼女たちは梓の靴を買うためにCamden Townへ寄り道することを決めるのですが、それが旅先のみならずその後の運命をも大きく変えていくことになります。ストーリーの最大の転機となった場面と言ってもいいでしょう。よく考えてください。梓がここで靴ずれを起こさなかったら、「いつもの自分たちでいいんだ」という自己認識を得ることはなく、また帰国後の教室ライブが開かれることもなかったわけですから。


"Put Yer Money Where Yer Mouth Is" / Oasis

Oasisの2000年のアルバム"Standing on the Shoulder of Giants"に収録されたこの曲は、シングルカットされた訳でもなくベストアルバムにもライブアルバムにも収録されていない、いわば知る人ぞ知るナンバーです。この曲が選ばれたのは大変興味深いことです。百石さんがあえてこの曲を参照した理由は一体なんだったのでしょうか?一度お聞きしてみたいものです。


ちなみにサントラの曲名は「London E」(#20)。偶然か意図的なのか、同曲の元ネタ"Put Yer Money…"が収録されたOasisのアルバム・ジャケットに書かれたタイトル"Standing on the Shoulder of Giants"の文字配列は、遠目に見ると白い「E」の一文字に見えます(リンク先のYoutubeの画面がアルバム・ジャケットです)。


6. 「蘭鋳」店内:「あいあむ、ぶちょー」~「カレーのちライスは?」の辺りまで
(BD&DVD 0:51:19~)

百石 「ピンチ大好き!」(「K-ON! ORIGINAL SOUND TRACK」Track.33)をちょっと爆発させた感じです。
(サントラCD:「#22.Pleasant despair」ライナーノーツ)

"Popcorn" / Hot Butter

この曲はシンセサイザー(モーグ・シンセサイザー)の黎明期に作られた1969年の作品で、1972年に作曲者のガーション・キングスレイがHot Butter名義でセルフ・リメイクして世界的に大ヒットさせた有名曲です。


7. 「蘭鋳」前:「おーすーしー」~「なんか不思議なきぶーん」の辺りまで
(BD&DVD 0:54:47~)

百石 監督からは「90年代のUKヒットチャートにチャートインしているような曲を作ってください」と言われました。この曲は、ちゃんとUK訛りのあるイギリス人の歌手さんに歌っていただいています。
(「公式ガイド本」P.115)

このシーンは音が小さく聞きづらいので、サントラCDをお持ちでしたら是非そちらでご確認ください(#23.Train-D)。


"Blue Monday" / New Order

New Order(ニュー・オーダー)は1980年代前半から活動を始めたマンチェスター出身のニューウェイヴのバンドで、エレクトリックな要素とロックを融合させたダンサブルなサウンドでクラブ・シーンを牽引し、後の80年代末~90年代初めにかけてのマンチェスター・ムーブメント(俗にマッドチェスターとも言う)の先駆けとなった存在です。元々はポスト・パンクの旗手であったJoy Division(ジョイ・ディヴィジョン)が母体でしたが、ヴォーカリストIan Curtisの自殺という悲運に見舞われ、その後、残されたメンバーがバンド名を改めて活動を再開させたのがNew Orderでした。
"Blue Monday" は彼らのデビュー曲であり、Ian Curtisの死を知らされた月曜日の心境を歌った重い内容でした。幾度も繰り返される"How does It feel ?"のフレーズに当時の彼らの悲しみや動揺を感じ取ることが出来ます。それでもこの曲は世界的な大ヒットとなり、皮肉なことに前身バンド以上の商業的な成功を彼らにもたらしたのでした*2


8. 「予約が必要だったとは・・・」~ロンドンアイの下まで
(BD&DVD 1:01:34~)

百石 UKのトライバルな音楽にチャレンジして、6弦ギターと12弦ギターとマンドリンを弾きました。
(サントラCD:「#26.Fairies' Party」ライナーノーツ)

"Norwegian Wood"(ノルウェイの森) / The Beatles

言わずと知れたThe Beatlesの「ノルウェイの森」です。100%この曲が元ネタだと断定できるほど一致している訳ではありませんので、あくまでご参考程度に。なお村上春樹の小説でも有名となった「ノルウェイの森」というタイトルは、原題の"Norwegian Wood"の誤訳として知られており、本来の意味は「ノルウェイ産の木材」(で作られた部屋や家具)といった意味合いです。歌詞の中にノルウェイの森の描写がカケラも出てこないのはそのためです。


9. ホテルの部屋:「こんな写真見るために集まったんじゃないんだよ!」~「部屋の鍵忘れてきちゃった」の辺りまで
(BD&DVD 1:04:03〜)

百石 閉じた世界、小さな額縁でループ感のあるようなものを、洋楽に例えるとこんな感じかな?と思い作りました。イントロのメロトロンで夜の眠気を表現した感じです。
(サントラCD:「#27.退屈な時間」ライナーノーツ)

"Strawberry Fields Forever” / The Beatles

百石さんの解説にあるメロトロンとは、鍵盤1つ1つに各音階に応じた音源テープをセットし、打鍵している間だけそれを回転させてヘッダーで再生するという"サンプル音声アナログ再生楽器"のことです。アナログ型シンセサイザーと思ってもらってほぼ間違いありません。


主に1960年代から70年代にかけて広く使用された楽器で、テープの再生音にはストリングス、人声コーラス、管楽器など様々なものがあり、アナログ特有のもわっとした不完全な再生音が逆に夢幻的な印象をもたらすことから、とりわけ英国のプログレッシヴ・ロックのアーティストが好んで使用しました(King Crimson, Genesis, The Moody Bluesなどが代表例)。デジタル・サンプラーが主流となった現代では既に過去の遺物のような扱いを受けることもありますが、先に述べたようなメロトロンでしか出せないノスタルジックでファンタジックな独特の音色が好まれ、現在でも販売され続けています。


The Beatles の"Strawberry Fields Forever"イントロの音もメロトロンで演奏されたもので、これはフルートの再生音であるとのことです。5人目のビートルズと言われたプロデューサーであるジョージ・マーティンの神業のような編集技術*3が冴える中期ザ・ビートルズのサイケデリックな逸品です。同曲は彼らにとって14枚目の両A面シングル盤で"Penny Lane"とのカップリングでした。


10. 唯の朝の散歩:「リサイクリング・オンリー!」~「あずにゃんのための曲・・・」の辺りまで
(BD&DVD 1:08:16~)

百石 ロンドンでお散歩をする唯をイメージして、歩きながら小石を蹴ったり道の脇にお花が咲いているのに目がいったりとか、そんな唯の目線を考えて作った曲です。
(サントラCD:「#31.お日様キラキラ散歩道」ライナーノーツ)

OP曲で紹介した"Penny Lane"の再登場です。


"Penny Lane" / The Beatles

いかがでしょう?こちらの方がどちらかと言えば全体的に"Penny Lane"に似た空気が感じられますね。


11. ライブ会場へ到着
(BD&DVD 1:13:53~)

百石 ライブ会場での気合の入った放課後ティータイムに作った曲です。ロンドンに滞在する日本の女子高生をイメージして作りました。
(サントラCD:「#34.女子の集中力」ライナーノーツ)

"Twilight" / ELO(1:21あたりから)

この"Twilight"という曲は2005年のTVドラマ「電車男」のOPに使われていたそうです。筆者は見ていなかったので全然知りませんでした。これはオフ会での発表時に逆に皆さんに教えていただきました。


その後、詳しく調べてみると、他にも様々なテレビCMに使われていただけでなく、

この歌は1983年の日本SF大会「DAICON 4」にて、DAICON FILMとして有名なオープニング・アニメーションの主題歌として無認可で使用され、日本では日本製のアニメーションと漫画のコアなファンからはカルト的な地位を獲得している。
(Wikipedeiaの「Twilight」の項目より抜粋)

といったように、80年代初頭の日本のアニメ界と深い繋がりを持っていることが分かりました。ちなみにこの「DAICON FILM」こそ後のアニメ制作会社「ガイナックス」の母体となった集団です(DAICONの中心にいた人物は言うまでもなく岡田斗司夫氏です)。
DAICON FILM関連ではかなり興味深い記述があるのでこちらも引用しておきましょう。

2005年に放送されたテレビドラマ『電車男』のオープニングには実写ドラマとしては珍しくアニメーション映像(『月面兎兵器ミーナ』)が用いられた。エレクトリック・ライト・オーケストラの楽曲『トワイライト』が使われており『DAICON 4オープニングアニメ』をオマージュしたものとなっている。このアニメを制作したGONZOは、1992年にガイナックスを退社した村濱章司、前田真宏、山口宏、樋口真嗣らが設立した製作会社である。当初ガイナックスに製作が依頼されたが断られ、GONZOが製作することとなったことを、村濱章司が明かしている。
岡田斗司夫はドラマ放映当時、この映像について「DAICON 4へのオマージュと言うかパロディなのは面白い」が、「アニメが下手でセンスが悪い」と自身のサイトで酷評した。
(Wikipedeiaの「DAICON FILM」の項目より抜粋)

サントラを手掛けた百石さんが、「電車男」のOPや更にその元ネタであった「DAICON 4」までを念頭に置いてこのサントラの曲(#34)を制作されたのかどうかまでは分かりません。しかし隔世遺伝のように伝承されていく様子を見ていると、"Twilight"という曲の持つアニメとの親和性やそれ以上の不思議な因縁を思わずにはいられません。


かなり脱線しましたので、最後にELOについてひとこと。
ELOElectric Light Orchestraの略称で1970年代の初めから80年代にかけて活躍したThe Beatles直系のブリテッィシュ・ロック/ポップスのバンドです。とりわけリーダーのJeff Lynne(ジェフ・リン)はThe Beatlesの熱狂的な信奉者であり、Paul McCartney, George Harrison, Ringo StarrらThe Beatlesの元メンバーのソロアルバムのプロデュースを手掛けているほどで、特にGeorge Harrisonとは1988年にTraveling Wilburysというバンドで一緒に活動をしていたことでもよく知られています*4


12. 野外ステージ下見中。遠くで聞こえるBGM
(BD&DVD 1:15:16~)

百石 日本のテクノというイメージでtrack20(London E)とは違う日本を表現しました。昔はテクノってあまり好んで聴かなかったのですが、ロックとかヒップホップとかやり尽くした後に、近年テクノの良さがだんだん分かってきまして…。
(サントラCD:「#35.Red jacket」ライナーノーツ)

これもBD&DVDではやや聴き取りにくいかもしれません。サントラCDをお持ちの方はそちらでご確認下さい。


"Solid State Survivor" / Yellow Magic Orchestra

Yellow Magic Orchestra(YMO)です。若い人はご存知ないかもしれませんので一応説明しておきますと、元「はっぴいえんど」の細野晴臣、元「サディスティック・ミカ・バンド」の高橋幸宏、そして当時はセッションマンとしてソロアルバムもリリースしていた坂本龍一の3人で70年代後半に結成された日本を代表するテクノポップ・バンドです。今でこそ「世界のサカモト」ですが、YMOのデビュー当時は坂本龍一の知名度が一番低かったのです。"Solid State Survivor"は彼らの評価を決定づけた2ndアルバムで世界的な大ヒットを記録した初期の代表作です。


ちなみにこの#35の曲名は"Red jacket"です。これはYMOの同アルバムのアートワークでメンバーが着用している赤い人民服を指しているのかもしれません。
Solid State Survivor


13. ラブクライシスの演奏
(BD&DVD 1:15:43~)


さてこれが最後です。


"Moby Dick" / Led Zeppelin

ラブクライシスの演奏シーンでわずか数秒だけ聴くことの出来るこの曲は、サントラCDが出たら是非聴いてみたいと思っていた楽曲の筆頭だったのですが、残念ながら収録されませんでした。誰がどう聴いてもLed Zeppelinです。どの曲とは特定し難いので出来るだけ似たテイストのものを選んだ結果、この曲に落ち着きました。彼らのステージでJohn Bonhamのドラム・ソロが披露される定番であり、長い時は20分近くもソロ・プレイが拡大されることもあったというライヴのハイライトを飾る曲でした。


現時点で私に分かるのはここまでです。
百石さんの言う「要素や仕掛け」は恐らくまだ他にもあるはずです。この先、どこかで別の元ネタにハッと気づくようなことがあれば、その時にまた追記いたします。


本稿では百石さんの言う「要素や仕掛け」に挑戦するようなつもりで調査を続け、CDのライナーノーツやインタビューなども適宜参照しつつ、自分の中で確信を持てるものだけを集めて紹介しました。もし「いや、これは違うだろう」というご意見をお持ちの方や、「あの曲は多分これが元ネタかも?」という貴重な情報を頂ける方がいらっしゃいましたら、コメントをお寄せ頂ければ幸いです。


後編の記事はこちらです。併せてご覧ください。
【小論】音楽視点で見る『けいおん!』の世界2 ~TVシリーズ・映画に登場した音楽ネタの徹底紹介!


(2013/2/12 記)

*1:百石さんの付ける曲名は、直接本編の内容と無関係なものが多いです。

*2:Joy Divisionはナチスの"慰安所"、New Orderは"新秩序"が語源とされており、バンド名そのものが物議を醸しだすこともありました。

*3:テンポもキーも違う2つの曲を1つの曲にまとめ上げるという離れ業を行っています。

*4:Traveling Wilburysは、ジョージ・ハリスン、ジェフ・リン、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ロイ・オービソンという目が飛び出るほど豪華な大物ミュージシャンが集まった覆面バンドでした。といっても全員サングラスをかけているだけで、一目見れば丸わかりだったのですが。