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【レポート】『たまこまーけっと』おさらい上映会&制作スタッフ・トークイベント:山田尚子監督・小川太一さん・竹田明代さん

2014年4月19日(土)。京都文化博物館フィルムシアターで映画『たまこラブストーリー』公開記念直前イベント、たまこまーけっと』おさらい上映会&制作スタッフ・トークイベントが開催されました。これはTVシリーズ全12話を劇場のスクリーンで一挙鑑賞した上で、山田尚子監督を初めとする制作スタッフのトークを楽しめるというもの。この先もう二度とないであろうこの機会に胸躍らせる思いで会場に駆けつけました*1

(※画像をクリックすれば拡大してご覧になれます。以下の写真も同様。)


スタッフ・トークに登場予定のゲストの方々は、山田尚子監督、演出の小川太一さん、色彩設計竹田明代さん、そしてMCを務められるプロデューサーの瀬波里梨さんの4名。この顔ぶれは開催直前の2日前に京都文化博物館からいただいたメールで初めて明らかにされました。トークの中でも触れられていますが、実は映画の初号試写が行われたのがほんの数日前という状況だったらしく、山田監督が登壇されるのかどうかはギリギリまで確定できなかったようです。しかし、無事に映画の制作も完了し(公開の10日前!)、一段落したところで監督のお話を窺える運びとなったのは何よりの僥倖でした。重責から解放されたばかりということもあって、リラックスしたトークを聞かせてもらえるだろうとの期待に胸が膨らみます。

2Fエレベーターホール前に設置された臨時受付


開場時刻の13:00となり、2Fの臨時受付で整理券をもらって3Fのフィルムシアターへと向かいます。すると階段を上りきったエレベーターホールに本日のサプライズ演出が待っていました。

昨年11月にみやこメッセで行われた京アニイベントCTFKで会場内に設置されていたキャラクターのスタンディです。風の噂で廃棄されたと聞いていましたが、まだ健在だったようです。これは嬉しいファン・サービスです。心ゆくまで写真撮影を楽しんでからいよいよシアター内へ(この先は撮影禁止です)。


ふと見回すと女性客の比率が比較的高いことに気づきます。私の着席したシートの左右背後もみな女性客で、1人で来られている方の姿も目立ちました。この辺りは『映画けいおん!』の客層が公開2週間を越えた辺りから、急速に女性客が目立ち始めた状況にどこかよく似ている印象があります。漏れ聞こえてくる雑談からは、山田尚子監督の作品のファンだとはっきり明言する女性客もいて、その裾野の広さを感じずにはいられませんでした*2


13:30。京都文化博物館の森脇清隆さん*3の挨拶でイベントが始まりました。途中休憩を1回入れて上映終了は18:30頃の予定。約5時間の長丁場。その後、少しの休憩を挟んでスタッフ・トークを開催しますとの説明があります。また本日のイベントの事前申込みの競争倍率は、約3倍強であったとの報告があり*4、こんなに『たまこまーけっと』をスクリーンで見たいと願うファンがいたのかと驚いたとのコメントがありました。客電が落ちていよいよ上映の開始です。



18:30。約5時間のマラソン上映会の終了。フィルムシアターの大画面で『たまこまーけっと』全12話を一挙鑑賞した感想は"この作品、こんなに面白かったんだ!"というものでした。TVシリーズを毎週見ていた頃は、余計な先入観や勝手な期待が心のどこかにあったので、今こうして曇りのないまっさらな心境で観ると、人の心の暖かさや人生の肯定感というこの作品が備えている本来の要素がはっきりと見えてきて、観終わった後に胸の奥に暖かな灯がともるような、そんな幸せな気分にさせてくれる作品なのだということにあらためて気付かされました。映画公開直前のこのタイミングで一切の雑念抜きで『たまこまーけっと』の世界に触れられたこと、また劇場の大スクリーンで鑑賞できたことは得がたい体験となりました。


会場のお客さんも選び抜かれた精鋭ばかりなので、ギャグシーンの反応も抜群で、終始暖かな笑いに包まれていました。最終話(第12話)終了と同時に巻き起こった惜しみない拍手が今日この場に集まった人の満足感を表していたように思います。



約10分ほどの休憩に入り、スクリーン前のスペースにスタッフ・トーク用の椅子が設置されます。18:45。森脇さんと共に京都アニメーションのプロデューサー瀬波里梨さんが入場され、瀬波さんのMCにより、シアター後方の入口から山田尚子監督、演出の小川太一さん、色彩設計竹田明代さんが前方スクリーンに向かって階段を降りて来られます。会場は割れんばかりの拍手。正面向かって左から瀬波さん、山田監督、小川さん、竹田さんの順に着席されます。


ここからはスタッフ・トークの再現レポートになりますが、例によって手書きで採録したメモを元にしていますので、部分的にメモが追いついていない箇所があること、実際の言い回しとは多少異なるものがあることをあらかじめご了承ください。意味を汲み取りにくい発言は私の判断で少し表現を補足しています。ポイントになる語句は過不足なく盛り込んでいるつもりですし、大意ははずしていないはずですが、重大な認識違いや書き漏らしがあるようなら、ご指摘いただければ幸いです。


自己紹介の後、一番右端の席で「一人だけちょっと遠くて寂しい」と言う竹田さんに「自主的に寄ってきて下さい」と返す瀬波さんの言葉に笑いが湧き起こる中、トークは始まりました。

―― 竹田さんと小川さんはこのような場に出演されるのは今日が初めてだと思います。まず小川さんに役職についてお聞きします。演出とはどんな仕事ですか?


小川 一言で言うと"マジック"です(笑)。僕の演出はロックです。山田さんは何ですか?
山田 私はパンクです(笑)。
小川 観る人に喜んでもらえるようにマジックをかけます。観る人の解釈によっては良くないものを良く見せるというか。
山田 演出は作品と観る人を繋ぐオペレーターだと思います。


―― 色彩設計の役割は何ですか?


竹田 キャラクターや小物の色を決めることが一番大きな仕事です。後は背景の夕方や夏の色に合わせてキャラの色を変えていく作業です。
山田 うちの作品は色を変えるのが多いと思うんですよ。カットごとに逆光の色も変えます。夕景はうちの作品多いですよね。
竹田 あんなに作らなくてもいいのに(笑)。(基本の夕景の色はあっても)話数によって色が違うものもあります。


―― 本日はおさらい上映会だった訳ですが、今『たまこまーけっと』を振り返ってみていかがでしょうか?


山田 (会場を見て)お尻とか大丈夫ですか・・・?痛くないですか?いい椅子なんでしょうね(笑)。実は私達も自主的におさらいしてきたのですが、見れば見るほど味わいの出てくる作品なのかなと思いました。


―― 小川さんは3話と10話の演出を担当されましたが、コンテを描く時にどういうことにこだわりましたか?


小川 この作品に限らず、監督の毛色を理解することから始めることが一番大事だと思いました。
山田 何しはったんですか?(笑)
小川 山田さんの作品は、頭で考えないというか理屈ばっていないと思います。「感じろ!」という感じで、情緒的、生っぽさが大事だと思いながらコンテを描いていました。
山田 小川さんの演出は穏やかで深く強くカットやシーンを紡いでいくもので、『たまこまーけっと』にとってとても合う演出をされる方だと思いました。料理に例えると、下ごしらえがしっかりしていて、小骨をしっかり取ってくれるような優しさ。車の運転とか上手そうですね。ブレーキを踏むのとか上手そう。そんな感じがします。


―― 竹田さんは色を決められる時、こだわったところは何ですか?


竹田 私がこだわった部分は、山田監督のこだわりと言っても過言ではないです。女子高生はちょっとリアルに、商店街の人達は明るくポップで弾けているように。だから商店街の人達には黒味を入れないようにしました。ジャストミートさんは紫の髪の色でも全然気にならない。それを受け止めるのが商店街の存在。
山田 お仕事が早い方です。たくさん引き出しを持っていらっしゃって反映の速度が速いです。
小川 山田さんは注文がすっごい細かいんですけど、それを受け止めて表現する技術力がすごいです。
竹田 はじめて誉められたよ(笑)。

ここからは今日参加したお客さんから事前に寄せられた質問に答えるというQ&Aコーナーです。私も以前から聞きたかった質問を1つ出しておいたのですが、それは幸いにも最後の方で読み上げられ、山田監督にお答えいただきました。では順を追って紹介します。

―― Q1:『たまこまーけっと』はどういうコンセプトで企画が始まったのでしょうか?1970年代のアニメのテイストを山田さんのセンスで作ったと感じるのですが。


山田 企画は石原さんからいただいて一緒に始めました。家族を書いてみたい、懐かしい感じのするものということで、アニメではなくTVドラマの『時間ですよ』*5の感じを山田さんっぽくしてみたら?と言われて、やってみますとお答えしました。鳥が喋るという設定は自分は抵抗はないけど、最近の子はどんな風に受け止めるのかなと思いました。


―― Q2:出町桝形商店街が舞台に選ばれましたが、アニメのロケハンは「イメージに合った場所を探す」「実際の場所からイメージしてアニメの舞台にする」のどちらでしょうか?


山田 最初は作品に合わせて雰囲気を作りこんで大まかなロケハンを行いますが、歩いている時に出会うということもあります。出町桝形商店街は歩いていて出会ったパターンです。最初目星をつけていたところが思っていたイメージとは少し違っていて、次にすごいハッピーなところがあるというので見に行ったら楽しそうなのが目に入ってきたんです。河原町通を歩いているだけだと気づきにくいんですけど、見た瞬間に国旗とか上から下がっていてハッピーオーラが凄くて「ここだー」って(笑)


―― あの時、美術の田峰(育子)さんも一緒でしたね。


山田 商店街の中に入ったら「サバいるー!」(笑)。


―― お餅屋さんも色々回りましたよね。おもち一杯食べてすごい太りました(笑)。


山田 あぶり餅*6に始まって、たくさんいただきました。


―― Q3:TVシリーズで好きな話数はどれですか?


竹田 色指定をさせていただいた9話が本当に良かった。父と娘の関係がジンときます。豆大、あんこ、もち蔵のそれぞれの恋の話でもあって。すごくまとまっている。


―― 北白川家恋物語でしたね。


竹田 (9話の)三好さんの演出は色指定泣かせなんです(笑)。これでいいですか?って聞いても笑顔でいいですよって返してくれるんですけど、いつも笑顔なので本当にいいのか真意を測りかねる(笑)。
小川 9話は安定した話数でした。色々と大変だったんですけどね…。
竹田 モブとかモブとかモブとか(笑)。
山田 あの話数はもち蔵が良かったですね。最後のシーンで(たまこから誕生日のケーキを貰って泣く)もち蔵の口元を押さえる手の描写に「なんだ、こりゃあ」と思いました(笑)*7。(オーディオ・コメンタリーで)撮影監督の山本倫さんは男の涙が許せなかったようで、そうかーと思っていたら、小川さんから「いやバカな、あそこは泣くとこでしょ」って言われて(笑)。


―― 小川さん、もち蔵の気持ちは分かりますか?


小川 分かりますよ。"生きるもち蔵"ですから(笑)。片思いで相手にその気がないという辺りにシンパシーがあります。ぐっと来る。恋愛物は好きなので、自分なりにもっと盛り上げたい思いはあります。
山田 TVシリーズの時に小川さんに「この先、もち蔵どうする気なんですか!?」と聞かれてすごい反省しました(笑)。


―― Q4:全体を通して印象に残っているシーンはありますか?


小川 自分の手掛けたものを除くと、実は1話が一番好きなんです。
山田 嬉しいです*8
小川 山田さんのやりたいことが一番表現されていると思うんですよ。あのワクワク感。これから何か始まるという感じ。


―― 山田監督としては?


山田 選べないんですよね・・・。全部と言いたいところですが。


―― Q5:登場人物の所作がとても生き生きとリアルに描かれているのが京都アニメーションの特徴だと思います。その仕草へのこだわりについてお聞かせ下さい。


山田 元々は石原さんからの系譜だと思います。石原さんから派生した山田→小川の亜種?
竹田 京アニの女子はしゃがむ時にスカートをお尻の下にたたみこむようにして座るんですよね。ああいうの好きです。
小川 あれはスカートの丈を考えたら、物理的にはありえないんです(笑)。
竹田 京アニさんのいいところです(笑)。
山田 良心です(笑)。キャラクターをキャラクターとして見ないように気をつけています。一人の人間として捉えて、なるべく決まった動きをさせないようにしています。同じシチュエーションでもみどりとたまこの動きは違います。
小川 「キャラクターに演技をさせる」と言う人がいるが、そうじゃないです。演技じゃないんです。
山田 キャラクターの手の高さで印象は変わりますよね。
竹田 たまこの手の振りはこの辺ですね(真正面に手を突き出して手のひらを左右に振る仕草)。


―― Q6:好きなキャラや共感できるキャラは誰ですか?


竹田 私は共感はしません。人間として見ているので、自分を投影するという感じがないんです。親戚のおばちゃんみたいに見守りたいというか支えたいという感じですね。
山田 キャラの中に自分はいないです。それは絶対できないなと思います。
小川 すごい冷静に見ないと作れない時があります。失敗したら自己満足になるので客観的な目で愛を注ぐという感じです。だから好きなキャラは?と言われると困ります。描いているその時のキャラに思い入れはありますが。


―― Q7:キャラの誕生日の由来を教えて下さい。


山田 たまこ(12/31)は餅屋が一年で一番忙しい日。もち蔵(10/10)はおもちの日だから。みどり(8/19)はスター性があって陰影もあるので獅子座の女かなと思って、デザイナーのココ・シャネルの誕生日です。かんな(6/7)は英国の建築家のマッキントッシュの誕生日。史織(4/2)は性格的に。学校が始まっていない時期に誕生日を迎えてしまって、お祝いしてもらえない少し可哀想なこの日に。彼女の一歩踏み出せない感じや、人よりちょっと早く大人になってしまう感じ。あんこ(5/4)は「ローマの休日」のアン王女の連想でオードリー・ヘプバーンの誕生日。チョイ(3/3)は女の子の日なので(笑)。女の子として生きていってほしいなという思いを込めて。あと、福さん(3/16)もあるんですよ。俳優の笠智衆さんです。お誕生日じゃないんですが、ええと、まあいいや(笑)。

ここで山田監督はごにょごにょと言葉を濁されましたが、後で調べて分かりました。3/16は小津安二郎監督作品で有名な俳優の笠智衆の命日です。

―― Q8:かんなはなぜデラのことをミスターと呼ぶのですか?


山田 音楽プロデューサーの中村伸一さんが出してこられたたくさんの呼び名の案の中のひとつでした。かんなとしては一応デラを敬っているんですよ。でも(笑)付きみたいな。


―― Q9:『たまこまーけっと』は皆さんそれぞれにとってどういう作品になりましたか?


山田 最終話のデラちゃんじゃないですが、胸のあたりがずっと暖かかったという感じです。人と人とのやり取りをさせてもらえて、自分もその人達と会話をしているような気になれました。
小川 技術的なことを山田さんから学びました。これを機にリスペクトしようかと。まごころを学ばせていただきました(笑)。シナリオが上がってきてコンテを描く段階で、この作品をどういう風にしたら面白くなるのだろうと考える。この作品はハートフル。ではハートフルって何かと考えていく中で、キャラクターをどう動かすかを考えていく内に演出の幅が広がったように思います。山田さんはものすごく色にうるさい人(笑)。僕は色に対する感覚が薄いので、映画で山田さんがあれこれ細かい色の指示を出しているのを見て「すげえ」と思いました。
山田 自分も色は苦手なんです。子供の頃に仲の良かった人から、あなたは色のセンスがないといわれたのがショックで一念発起しました(笑)。だから今も色を扱う時は緊張します。幼い頃のその子の声が聞こえてきて・・・。
竹田 それトラウマじゃないですか(笑)
小川 色彩検定の教科書とか見ていても「これじゃねえ」とか思ったりします・・・って、何の話してましたっけ?(笑)
竹田 昔、自分が見ていたあったかい気分のアニメをまさか自分が作れるとは思いませんでした。最近こういうのがなかったので嬉しいです。私が色彩設計をやれて良かったです。


―― Q10:ではここからは新作映画に関する質問です。『たまこラブストーリー』は先日試写会があったばかりですが、今のお気持ちをお聞かせ下さい。


山田 試写会で大きなスクリーンで観て、ゲシュタルト崩壊*9しそうになりました(笑)。すごくクールな感じでいたんですけど、2、3日経ってもまだ心が暖かい気がするんですよ。もしかしたら、ちゃんと映画できたのかもって思っています(笑)。
小川 大変な戦いでした。
竹田 本当に終わらないかと思った。皆さんに届けられて本当に良かった。何回か心が折れそうになりました。
小川 自分の演出は冷静に観れないのですが、でも今回は鳥肌の立つようなシーンを自分でも感じられました。僕は自信を持っています。


―― Q11:ここを観てほしいという映画の見せ場はありますか?


山田 いらんことを言ってネタばれしてしまいそうで(笑)。
竹田 観ても絶対分からないと思うので言ってしまいますが、OPで映画のフィルムのコマが映るんですけど、1コマずつ全部色を変えています(笑)。
小川 潜在意識に働きかけるような匙加減ですね。撮影さんにお願いするんですよ。もっと働きかけるような感じで!って。
竹田 それ言われる方が大変でしょ(笑)


―― Q12:TVシリーズと映画とでイメージカラーの違いはありますか?


山田 映画では髪の色や制服の色を深いものにしています。
竹田 TVシリーズではバランスを考えて明るめにしたのを今回戻しました。制服のリボンも深みのあるしっとりした色に変えています。でも商店街の人達(の明るい色遣い)は変わっていないです。
山田 映画のイメージカラーは、新緑の緑色、黄色、青色です。


―― Q13:映画のエピソードは何かありますか?


山田 映画の完成後、ビデオ編集で色味を調整する作業(鮮やかな色にしたり、逆に鮮明度を落としたり)をキューテックさんにお願いした時、みどりの顔の色が暗かったので「みどりを上げて下さい」と言ったのに、全然変わっているように見えないんですね。もっと明るくして下さい!もう一声!と言ったら、みどりちゃんの背景の新緑のミドリがパァーって明るくなっているんですよ(爆笑)。背景めっちゃ鮮やかになってる(笑)。話が通じていると思ってたらそうじゃなくて。「みどりちゃん問題」って言うんですけどね(笑)。
小川 僕も監督の言っているミドリを間違えていたことがありました。
竹田 私はどっちのミドリか何度も確認しました(笑)。


―― Q14:公式サイトの山田監督のインタビューにもありましたが、ある先輩監督が「みんなこのシナリオを読め、恥ずかしいから」と言ったそうですが?(笑)


竹田 シナリオ読んだ時、超恥ずかしかった(笑)。えーこれを映画にするの?と思いました。でも見慣れてくるとそうは思わなくなった。
小川 シリーズでは見られなかった、たまこをぜひ見てもらいたいです。
山田 そんなん言うんやったらもち蔵も見てほしい(笑)。あと、みどりも、いや、みどりちゃんも(笑)。
竹田 でもミドリ(新緑)にもこだわっています。
山田 もうわかんない(笑)


―― Q15:TVシリーズ制作時から、たまこ自身のLOVEを描こうというような予定はあったのですか?

瀬波さんが「少し長いので端折りますが・・・」と断った上で読み上げられたこのQ15が私からの質問でした。この回答については、監督はかなり重要な発言をされているので、それについては後程まとめて記述します。

山田 TVシリーズは"Everybody Loves Somebody"というテーマでやっていて、もち蔵が片想いの目線をたまこに向けているというところがすごく好きでした。でも恋愛を成就させるためのシリーズではなかったので、なんとか入れたいなと思ってEDの映像を作ったんです。実はEDはもち蔵がたまこを撮っている映像で、恋する目線を描きたかったんですね。なので今回映画ができて本当に良かったです。


―― Q16:ノベライズ第2巻や、TVシリーズ1.5という話があったと思うのですが、それは今回の映画になったことで完結したのでしょうか?


山田 (瀬波さんの持っていた原稿を山田監督が手にとって殆ど棒読みで告知文を読み上げる)映画『たまこラブストーリー』のノベライズが7月発売予定です。たまことみどりの視点を追った物語、南の国にいるチョイちゃんのストーリー。あれ?これ私もう読んだよ?(笑)


―― 本日、この後、公式サイトでノベライズのサイトがオープンします。


山田 TVシリーズ1.5の映像化の話ですけど、あれは去年の5月のイベント(KBSホール)の時、デラ役の山崎たくみさんが勢い余って希望を言ってしまったんですよ(笑)。上から見てる瀬波さんが両手で大きく×印をしていて(笑)。


―― ではそろそろお時間となりました。最後にお一人ずつメッセージをお願いします。


竹田 本日は長々と観ていただいてありがとうございました。映画はつい最近出来上がりました。胸キュンしていただきたいと思います。
小川 良い作品に出来上がったと思います。「考えるな!感じろ!」という思いで、胸キュンしてもらえたら(笑)嬉しいです。
山田 (客席を見て)お時間大丈夫ですか・・・?こんなに沢山の皆さんが観に来て下さるとは思わなかったです。嬉しいです。本当にありがとうございます。大切に作った作品ですし、今度ラブストーリーを作らせてもらいました。きっと、多分、喜んでいただけるものが出来たと思っています。(なぜか段々小さな声になっていく)ちょっとドキドキしています。心をこめてみんなで作りました。よかったら観に来てください。ありがとうございました。

シアター背後の出入口へ向かって階段を上がっていかれる4人の皆さんを万雷の拍手が見送ります。終了時刻は19:45。約1時間もの長きに及ぶスタッフ・トークでした。これだけのボリュームで、かつこれほどの至近距離でスタッフ・トークを見れる機会は滅多にないでしょう*10。映画の舞台挨拶ではこうはいきません。このような貴重な機会をご用意され、当日の運営にご尽力いただいた京都文化博物館のスタッフの皆様、並びに出演された山田監督を初めとする京都アニメーションの皆様にあらためて感謝の意を表します。ありがとうございました。


■Q15に対する山田監督の回答について
先のQ15で読み上げられた私の質問の原文は次の通りです。「"Everybody Loves Somebody"が『たまこまーけっと』の大きなテーマだったと思いますが、TVシリーズではたまこ自身のLOVEは描かれませんでした。それが今回、映画のメインストーリーとして描かれることになったので、とても嬉しく思っています。TVシリーズ制作の頃から、いつか続編でたまこ自身のLOVEを描こうという思いや予定のようなものはあったのでしょうか?」


TVシリーズ放映期間中、私は次のような小文を自ブログに掲載しました。
【小論】『たまこまーけっと』:中心の不在、または後景化する主人公


完結していない作品の感想を途中段階で纏めるというのは自分にとっては本来異例のことですが、それはこの当時、『たまこまーけっと』という作品に感じていたある種の違和感の正体を自分なりに整理しておきたいという思いに駆られてのものでした。主人公であるはずのたまこのLOVEが見えない、いや、むしろ入念にそこだけを描かないように迂回している。結局、TVシリーズのたまこは自らの恋愛感情の発露を見せることなく、恋愛から最も遠い人物として描かれ、物語はたまこが商店街という共同体の内部に回収されていく形で一旦の収束を見た訳ですが、そこにはどうしても拭いきれない違和感がありました。なぜ最後まで主人公であるたまこ自身の恋愛を描かなかったのだろうという疑問です。


しかしその後、続編制作の発表があり、それが映画であり、かつたまこ自身のLOVEを描くものになると聞いた時、これこそ私が最初に『たまこまーけっと』に求めていた物語だと内心小躍りすると同時に、今回の映画とTVシリーズとが相互に補完しあうことで、『たまこまーけっと』の世界はようやく完全な形で完結するのだろうと思いました。これはこれで個人的には嬉しい展開です。しかしそれでは、映画の構想(=たまこのLOVEを描く)はいったいいつの時点で明確になったのか。TVシリーズ制作中から、続編もしくは映画という形で別枠でたまこのLOVEを描くことが予定されていて、だからこそあのような形でTVシリーズを纏めたのだろうか・・・と、その辺りの経緯を山田監督からお聞きしてみたくてこの質問を出してみた訳です。それに対する監督の回答は先の通りでした。再度引用します。

山田 TVシリーズは"Everybody Loves Somebody"というテーマでやっていて、もち蔵が片想いの目線をたまこに向けているというところがすごく好きでした。でも恋愛を成就させるためのシリーズではなかったので、なんとか入れたいなと思ってEDの映像を作ったんです。実はEDはもち蔵がたまこを撮っている映像で、恋する目線を描きたかったのですね。なので今回映画ができて本当に良かったです。

山田監督のお話を聞く限り、TVシリーズはあれはあれで初めから完結した物語として想定されていて、続編や映画の構想は制作当時はなく、たまこは最後まで恋愛感情に目覚めることなく終わることになっていたようです。そしてEDの映像は、「恋愛を成就させるためのシリーズではなかったので、なんとか(もち蔵の恋愛成就の要素)を入れたい」という思いで作った映像だと語っていらっしゃいます(言葉の数が少ないので断定して良いのかはやや迷いますが)。


ED映像がもち蔵の撮った映像であることは、TVシリーズBlu-Ray&DVDのオーディオ・コメンタリーで山田監督自身が発言されており、私もその理解の下に観ていましたし、だからこそもち蔵の叶わぬ想いと片想いの目線が視覚的に表現されているように見えて、なんとも切ない映像だと思っていたのですが、今回の監督の発言の後ではED映像の解釈がまた大きく変わってきます。あの映像に映っているたまこは、もち蔵の恋愛が成就した後のたまこの姿であるということになるからです。その視点でもう一度、ED映像に目を向けると、髪留めを外してしっとりと潤んだような瞳でカメラを見つめるたまこの視線にどきりとさせられます。確かにこれは本編では見せることのないたまこの表情です。


・・・そういうことだったのかと、あらためて唸ってしまいました。そして「映画が出来て本当に良かった」という言葉からは、やり残しとなっていた宿題をすべて終わらせたような山田監督の安堵感が伝わってきます。映画の中でもち蔵とたまこの二人の関係の変化はどのように描かれるのだろうかと、今、私はTVシリーズのED映像を何度も見返しながら、あれこれと想いを馳せているところです。


映画『たまこラブストーリー』は4/26(土)公開です。


(2014/4/20 記)

*1:当イベントはメール等での事前申し込みによる抽選制でした。

*2:たまこまーけっと』は第3話と第9話で絶対泣くからヤバいという言葉も聞こえてきて、私と一緒だなぁと共感したり(笑)。その後、休憩時間に耳にした他の女性の会話からも、第9話の評価がとりわけ高いことを実感しました。私も同感です。

*3:たまこまーけっと』EDクレジットの取材協力にお名前があります。

*4:当日は最前列のK列がトーク・イベント用に撤去されていたので定員数は156名でした。

*5:1970年代に一世を風靡したTVのホームドラマ。下町の銭湯を舞台としたコメディ。久世光彦演出作品。

*6:京都市の今宮神社東門にある「かざり屋」と「一和」のものが有名。本家と元祖の餅屋が道を挟んで向かい合って商売を競い合う様子は、まさにリアル『たまこまーけっと』の趣き。

*7:あの仕草は後に映画『たまこラブストーリー』ラストの見事な演出へとつながることになるので分からないものです。

*8:第1話は、山田監督の絵コンテ・演出回。

*9:心理学用語:あるまとまりを持った構造物の個々の構成要素ばかりバラバラに認識されて、本来の全体性を認識できなくなる現象のこと。

*10:私の席は最前列のど真ん中、ほんの1.5mほど先の手の届くような距離に山田監督が座っていらっしゃるというこれ以上ない絶好のポジションでした。これは登壇されたスタッフに不慮の事態が起こらないようにとの京都文化博物館側の配慮で、最前列には文博側が素性を把握している安全な人を意図的に配置していたようです。いざとなった時の人間の盾でもあるのですが、それでも個人的には大変ありがたい配置でした。