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【舞台探訪】『聲の形』(原作):第3巻

舞台探訪: 聲の形

【注意!】当記事では原作の内容の詳細について触れることになります。原作未読の方でネタばれを避けたい方はここから先へは進まないでください。

大今良時さんの漫画『聲の形』の舞台探訪の記事、今回は第3巻の紹介です。

聲の形(3) (講談社コミックス)

聲の形(3) (講談社コミックス)

 

→前回までの記事はこちらです。
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第1巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第2巻
→本稿以降の記事はこちらです。
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第4巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第5巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第6巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第7巻

■第3巻について
第2巻では硝子と再会しただけでなく、永束や結絃との新たな交友が生まれた将也。彼の世界は徐々に外へと開かれつつありました。しかし第3巻では、将也は触れたくない小学校時代の記憶に否応なく直面させられます。忘れたと思った頃に不意に蘇り、目の前に立ちふさがる過去。逃げようとしても亡霊のように追いかけてくる自責の念。過去と対峙しなければ未来などないとでも言わんばかりに・・・。そして佐原みよこ、植野直花との再会はまるで触媒のように将也と硝子の二人の関係に大きな変化を与えていくことになります。

 

■舞台探訪 『聲の形』(原作):第3巻
※各シーンの場所情報はGoogle Mapにまとめてあります。各々の場所を確認されたい方は、当記事末尾に掲載しているMAPを拡大してご覧下さい。


表紙絵
JR大垣駅ホーム MAP 17
『聲の形』第3巻の表紙絵はJR大垣駅のホームなのですが、これがなかなかの難物で、現実にはこの通り撮影することはできません。そもそも大垣駅は真っすぐな直線ホームなので、この絵のようにカーブを描いた場所はありません。では別の駅なのかというとそうでもなく、JR大垣駅特有の特徴もちゃんと描きこまれていて・・・と色々悩ませてくれます。f:id:los_endos:20160810000218j:plain
かろうじて全体のイメージに一番近い写真を撮ろうとすると、大体こんな感じになりますが、実は細部が色々異なっています。順番に見ていきましょう。JR東海のサイトに大垣駅のMAPがありますので、こちらのリンク先でホームの全体像をご確認ください。


上掲の写真の撮影場所は、5番線ホームのエスカレーターを降りた辺りから名古屋方面を向いたアングルです。表紙絵と写真の双方に[5]のナンバーの標識があります。表紙絵をよく見ると手前と奥で屋根の形状が異なることに気づきます(下図の赤枠)。f:id:los_endos:20160811113423j:plain
大垣駅のMAPを見ていただければお分かりの通り、5番線ホームの奥には樽見鉄道の発着場所である6番線ホームがあります。ここから先の屋根が異なっているのです。f:id:los_endos:20160811115022j:plain
(左)5番線ホームの奥。左手に樽見鉄道の6番線ホームがある。
(右)樽見鉄道のホーム。

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(上)写真の右半分が樽見鉄道のホームで、左右で屋根が分断されていることが分かる。
(下)樽見鉄道ホームの屋根と支柱。列車は写真左側(6番線)に入線する。

また以下の[5][11]の標識・照明・時計のパーツは、手前から奥に向かって[5]→[11]→照明→時計の並びで、照明は5番線ホームの東海道線と樽見鉄道との境目、時計は更に奥の樽見鉄道のホーム上にあります。表紙絵ではいずれも比較的近い場所に固まってあるように見えますが、実際には幅のある距離をズームで圧縮して描かれています。f:id:los_endos:20160811120506j:plain
(上)手前から奥へ向かって、[5]→[11]→照明→時計の並び順。

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(上)時計はかなり奥まった場所にある。

3巻の表紙絵の不可解な点は、左端の時刻表の背後に金網の柵が見えることです。撮影場所(と思われるポイント)から見てホーム左側は7番線、百歩譲って樽見鉄道の6番線ホームだとしても、どちらもこの位置に金網の柵はありません。
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しかし、ホーム内に一か所だけ該当すると思われる場所がありました。東海道線の美濃赤坂方面行き3番線ホームです。f:id:los_endos:20160811123658j:plain
表紙絵の金網とは色も形状も異なりますが、現状ではここしかありません。また表紙絵のホームの幅の狭さは5番線ホームより3番線ホームにより近いということもあり、表紙絵は5番線ホーム(名古屋方面)と3番線ホーム(美濃赤坂方面)の合成である可能性が高いと思われます。しかしなぜそのような面倒な描き方をする必要があったのか皆目わかりません。謎は深まるばかりです。


P.4 3コマ目
美登鯉橋 MAP 03
橋の北側を向いたアングルです。私のコンデジでは、画面右端の住宅を橋の上から画角内に捉えることは無理でした。相当な広角レンズを使用するか、かなり後ろに引いた位置から撮影するしかありません。f:id:los_endos:20160811140107j:plain


P.5 3コマ目
チーズケーキプリンセス MAP 18
画面左端に描かれている建物は、これまでの橋周辺のカットでも小さく描きこまれていますし、第5巻P.121でもう少し大きく登場しますが、ここで紹介しておくことにします。f:id:los_endos:20160811141902j:plain
美登鯉橋のほど近くにあるチーズケーキ専門のカフェ「チーズケーキプリンセス」です。店内での食事やテイクアウトもできますので、舞台探訪・聖地巡礼の際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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チーズケーキプリンセス
水曜日定休

9:00~19:00(LO 18:30)

P.10 1コマ目
将也の通う東地高校のモデル MAP 70
この場所については第7巻で詳述します。とりあえずここでは、第1巻の本文に記した通り、高校のモデルとなった場所は大垣市どころか岐阜県ですらない想定外のところにあるとお伝えしておきます。手っ取り早く場所だけ知りたい方はMAPを参照してください。(P.71、P.114、116も同じ場所です)。

P.15 1コマ目

JR大垣駅改札口 MAP 19
JR大垣駅の改札口ですが、これも実際の場所をそのまま描いているわけではなく、恣意的な改変の跡が幾つか見られます。見比べてみましょう。
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(上)『聲の形』第3巻P.15より。JR大垣駅改札口の風景を忠実に描いていると思いきや・・・。

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きっぷ売り場の窓口が1つに減らされて、奥の時刻表パネルの位置と左右逆になっていること。更にそのきっぷ売り場が改札横の有人改札口として描かれていること。時刻表パネルも5枚から3枚になっていること・・・。その結果、全体に横幅が圧縮されています。これは手前の自動きっぷ売り場と奥の改札の双方を縦長の1枚のコマに収めるために必要な改変だったのではないかと思います。というのも、後に描かれるP.36の改札口のカットは比較的、実際の風景に忠実に描かれているからです(当然、P.15の絵と不整合を起こしています)。

なおカットの右上隅に見切れている物体は、きっぷ売り場窓口の上に掲げられたオブジェの一部です。
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■片道800円の謎
P.15の1コマ目「片道800円」という将也の台詞から、佐原みよこの通う太陽女子学園の最寄の駅を推察してみます。ひとつ注意が必要なのは、現在(2016年8月時点)のJRの運賃は消費税率5%→8%への引き上げに伴う2014年4月の料金改定後のものであり、この第15話が描かれた2013年末時点の運賃は改定前の料金であることです(ちなみにそれ以前の料金改定は1997年4月)。
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(上)JR大垣駅の運賃表(2016年1月撮影)。

では第15話が描かれた当時、大垣駅から「片道800円」に該当する駅はどこだったのでしょうか?2013年12月にJR東海が「消費税率引上げに伴う運賃・料金改定の認可申請について」という文書を公開しており、そこで新旧の運賃比較表を確認できます。それを見ると、820円→840円という料金はあっても、当時(現行)の片道料金が800円という運賃は存在しません。f:id:los_endos:20160811160454p:plain

これはどういうことでしょうか。P.14の5コマ目でご丁寧に100円玉2枚のつり銭を描写しているにも関わらず、現実には片道800円の駅は存在しなかったわけです。これはもしかすると、原作者の大今さんが切符購入後のつり銭を描く手間を省略するために端数を切って800円ポッキリにしたのではないかという可能性も考えられます*1ので、ここは切り捨てで「800円」ちょうどになる、つまり第15話執筆当時、大垣駅からの運賃が820円、現在は840円の駅が佐原みよこの通う高校の最寄り駅であるとひとまず仮定してみます。更に朝のラッシュの描写(P.30-31)から米原方面ではなく名古屋方面であると思われますので、この段階で運賃840円の尾頭橋、金山、熱田、鶴舞の4駅に候補は絞られました。
(→この項はP.23、P.33の記事に続きます)

P.16 5コマ目
JR大垣駅改札口 MAP 19
先ほどのカットの反対方向、駅南口方面を向いたアングルです。f:id:los_endos:20160811163048j:plain


P.18 1コマ目
JR車内 MAP なし
問題です。この列車は画面の左右どちらへ進んでいると思われますか?f:id:los_endos:20160811171257j:plain
列車の進行方向が画面の左右どちらであるのかは、静止している漫画のコマからはなかなか読み取れません。ただ将也と硝子二人の行先が大垣から東の名古屋方面であるということは上述の推理でほぼ分かっています。通常の人の感覚では西⇔東は左⇔右と一致します。これは地図の左右が西東と対応していることから生理的に身についた視覚の運動性といってもよく、これに逆らった動きは強い違和感を抱かせるため、映像の運動性も基本的にこれに倣います。


地図上で大垣→名古屋は左→右行き。従ってこの場面の列車の動きは左から右への進行方向と考えるべきです。それを裏付けるように映画の予告編で登場する列車の進行方向はやはり右行きでした。
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(上)『映画 聲の形』予告編より。列車の進行方向は右向き。アニメでは窓から差す夕刻の西日も描かれている。

■nichinichisou0607
不意に将也に届いた硝子からのメール。彼女が将也のメールアドレスを知っていたのは、第3巻P.3で明らかなように、永束が将也のメアドをゲット→結絃に横流し→硝子に伝えるという流れだったのではないかと思います。自分のメアドを教えようとしてなかなか言い出せない将也の煮え切らない様子を離れたところから見ている結絃の姿があります(P.7)ので、この推測でほぼ間違いないでしょう。硝子の「石田君が佐原さんを探してるって聞いて」という情報も、永束→結絃のホットラインで伝わったはずです。

硝子のメールアドレスのnichinichisouは花の「ニチニチソウ」。第2巻の記事で書いた通り、硝子にとって大切な意味を持つ花です。先の記事から再掲すると花言葉は「楽しい思い出、生涯の友情」。なお0607は硝子の誕生日の6月7日です(第5巻P.176)。

P.33 4コマ目

JR金山駅ホーム MAP 20
先ほどの「■片道800円の謎」の実地検分です。結論を先にいうと、佐原みよこの通学駅はJR金山駅で正解でした。4候補あった中で最初に当たりをつけた駅で取材を始めて、すぐに場所を特定できたのは幸いでした。
(※ここだけ紹介するページが前後することになりますが、場所の説明をする上でこの方が分かりやすいため、あえてイレギュラーな並びとします)f:id:los_endos:20160811195919j:plain
4番線ホーム左側の建築物の下方に特徴的な擁壁(ようへき)があります。P.33のカットの左端、佐原みよこの背後に同じものが見えます。f:id:los_endos:20160811200057j:plain


P.34 3コマ目
JR金山駅ホーム MAP 20
ホームにある時刻表。一致しているとは言いがたいですが、最上部の「東海道線時刻表」「名古屋・大垣方面」の日本語表記/英語表記は比較的元のイメージを残して描かれています。f:id:los_endos:20160811204458j:plain


P.35 4コマ目
JR金山駅ホーム MAP 20

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P.23 5コマ目
金山総合駅南口1 MAP 21
ここで少しページを戻します。将也と硝子が最初に金山駅までやってきたときの場面です。f:id:los_endos:20160811211521j:plain


P.23 6コマ目
金山総合駅南口2 MAP 22f:id:los_endos:20160811211532j:plain
どちらのカットも金山総合駅の特徴的な建築意匠だけが特定の決め手で、到底一致しているとはいえません。近辺の建物との合成、もしくはパッチワークのような背景画なのかもしれませんが、現時点でこれ以上のことは分かりませんでした。


P.36 1コマ目
JR大垣駅南北自由通路 MAP 23
大垣駅の南北自由通路から見える風景(名古屋方面)だと思うのですが、奥に見える建物はあまりそれらしく描かれていません。f:id:los_endos:20160811215520j:plain


P.36 2コマ目
JR大垣駅改札口 MAP 19
P.15の1コマ目と有人改札の辺りが少し違っています。f:id:los_endos:20160811214649j:plain


P.46 1コマ目
JR大垣駅改札口 MAP 19f:id:los_endos:20160811222333j:plain


P.47 1コマ目
岐阜市 柳ヶ瀬通り MAP 24
JRに乗って4人が遊びに来た場所は、岐阜市内の柳ヶ瀬通りの商店街です。f:id:los_endos:20160811231524j:plain
(上)週末昼の柳ヶ瀬商店街。この時間帯は夜の街の賑わいもなく閑散としている。アングルは東向き。


「炉ばた焼 たぬき」の店名がほぼそのまま背景に描かれているのは少し驚きでした。もしやと思って拡大して細部を比較してみると、意外と忠実に描かれていることも分かりました。f:id:los_endos:20160811232140j:plain


P.47 2コマ目
岐阜市 柳ヶ瀬通り MAP 24
前のカットの撮影位置から真反対に向いたアングル(西向き)。 f:id:los_endos:20160811231625j:plain
元の絵の将也の背後右上にある「ン」の字が何であるのか、ずっと気になっていたのですが、現地を訪問して謎が解けました。f:id:los_endos:20160811234432j:plain
ヤマザキパ「ン」でした。

この界隈はどちらかといえば「柳ヶ瀬ブルース」に代表される夜の歓楽街のイメージが強い場所で、私が取材に訪れた昼過ぎは閑散としていて、ほとんど人通りがありませんでした。なおP.50のカラオケ店、P.56のゲームセンターのモデルは発見できていません。

ちなみにカラオケ店で佐原が歌おうと言い出した合唱曲は、第1巻で散々な結果に終わったと伝えられている合唱コンクールの課題曲だったのではないかと思います。そしておそらくその曲が「グリーン・グリーン」。それは耳の聴こえない硝子にとって数少ない歌える唄だったはずです。


P.49 4コマ目
岐阜市 柳ヶ瀬通り MAP 24
前のカットからやや東に移動しての別アングル(西向き)。永束の左背後に銅像の一部が見えます。
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反対方向へ回りこんで正面から見た銅像です。f:id:los_endos:20160813121546j:plain


■将也の手話
P.58の6コマ目。
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両手を拳にして右手を左手の上に持ってきて胸元に引き寄せる仕草は「気をつける」。右手を顔の前に持ってきて指を開き、そのまま右方向に移動させて親指と残りの指を閉じるのは「帰る」。
→(意訳)「気をつけて帰れよ」

この時、隣の佐原みよこが将也の手話を見ていました。P.59の3コマ目での驚いたような表情はそのためです。この日、将也が硝子と手話で会話をしている様子はないので、彼が手話ができるということをこのとき初めて知り、そしてその意味するところを悟ったのでしょう。

■硝子の手話
P.66の3-4コマ目。

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「(両手の人差し指を寄せる)会う、(右手の親指と人差し指を開いて顎の位置から指を閉じながら下に降ろす)~したい・好き、(指文字の「て」の形=手のひらを作り、そのまま後ろに向け、後方に動かす)昔・過去」(※手のひらを上に向けて前に差し出す手話は、別のシーンでも硝子が同じ仕草をしているので、通常は人差し指を突き出す「あなた」の丁寧な表現ではないかと思います。)
→(意訳)「(石田君は)昔の人で会いたい人はいないの?」

P.67の4コマ目。
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「(右手を顎に垂直に立てて、人差し指で顎をトンと軽く叩く)本当?」
顎を2回叩くと「本当」。絵のように1回だけ「トン」と叩くときは「本当?」という疑問形になるようです。
→(意訳)「本当?」


P.74 3コマ目
JR岐阜駅前バスターミナル MAP 25 
ここからP.85までの舞台は実は大垣市内ではなくJR岐阜駅前のバスターミナルです。この場面は学校からの帰り道のはずなので、そこで岐阜市内が描かれるのはおかしいといえばおかしいのですが、この作品の場合はあまり拘っても仕方ないようです。f:id:los_endos:20160813153952j:plain


P.74 4コマ目
JR岐阜駅前陸橋 MAP 26 
岐阜駅北の陸橋を下から捉えたアングルです。f:id:los_endos:20160813155600j:plain


P.75 3コマ目
パン屋の店頭? MAP 27
岐阜駅北の陸橋を越えて54号線沿いの北側にある店舗です。原作の絵にはパン屋を思わせる貼り紙がありますが、実際の場所はシャッターが閉まっており確認することはできませんでした。配電盤の位置など色々と異なりますね・・・。これは確証はありません。f:id:los_endos:20160813161826j:plain


P.78 5コマ目
岐阜駅北交差点 北東角 MAP 28
岐阜駅北の交差点(北東角)から西向き。問屋町ビルを見るアングルです。f:id:los_endos:20160813162913j:plain


P.79 1コマ目
岐阜駅北交差点 北東角 MAP 28
前の写真と同じアングルから引きのショットですが、あらためて見るとこれがもう実に難儀なカットで・・・(笑)。細かい部分はほとんど一致しませんが目を瞑ることにします。左端に見える背の高いビルは「岐阜シティ・タワー43」です。
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P.80 3コマ目
岐阜駅北交差点 北西角 MAP 29
前のカットの南北の大通り(金華橋通り)を渡って東向きに見たアングルです。f:id:los_endos:20160813170046j:plain


P.82 3コマ目
岐阜駅北交差点 北東角 MAP 28
岐阜駅方面(南向き)のアングル。これも正確には合わないのですが、細かいことを言い出したらキリがありません。画面奥にあるのがJR岐阜駅。右側の丸味を帯びた建物は交番です。f:id:los_endos:20160813171048j:plain
画面の中ほどには階段もしっかり描かれています。f:id:los_endos:20160813173527j:plain
植野との再会シーンで唐突に現われたJR岐阜駅前(北側)風景ではありますが、各場面の背景は実際の位置関係を正確に描いていることが分かります(細部はアレンジされていますが)。強いていうなら南北の大通り(金華橋通り)がなくなって、東西の歩行者用道路がひとつながりになっているような印象を受けることくらいでしょうか。そうでなければP.82の3コマ目のカットが説明できません。


P.123 3コマ目
OKBストリート MAP 30
舞台は再び大垣に戻ります。ここは駅前から南北に伸びる郭町商店街、通称「OKBストリート」。大垣(O)共立(K)銀行(B)の3文字を擁する名の通り、この通り沿いに銀行の本店があります。このカットについては背景の店舗等、決め手になる情報が少ないのでとりあえずイメージ的に現地の写真を掲載するに留めておきます。OKBストリートのこの場所という訳ではありませんのでご注意ください。f:id:los_endos:20160813183743j:plain
なお、ここで将也がOKBストリートの東西どちらを南北どちら向きに進んでいるかですが、次に解説するP.125の3コマ目の描写から「西側の通りを南向きに走っている」と判断できます。


P.125 3コマ目
横断歩道 MAP 31
植野が走り去る先に見える建物が「岐阜バストラベル 大垣旅行センター」です。この場所はOKBストリートの東側にありますので、このカットは将也のいる位置から真東を向いたアングルということになり、必然的に自転車は西側の通りを南向きに走っていたことが分かります。f:id:los_endos:20160813192009j:plain
この場所は映画の予告編でも登場しますが、一目して原作とは異なる描写・演出であることに気づきます。原作では横断歩道を渡りきった植野はそのまま商店街の東側(OKBストリートEAST)を北上し、フラワーショップの前で硝子をつかまえる訳ですが、映画版では旅行センターの前がその場面となっているようです。f:id:los_endos:20160813185710j:plain
(上)映画の同場面。原作のフラワーショップ前のシーンが横断歩道を渡りきったところにある旅行センター前に変更されています。「SKB」は「OKB」のもじり。劇中で「大垣」は「水門」なので、水門(S)共立(K)銀行(B)となります。このカットについては映画版の記事であらためて紹介します。


なお、原作のフラワーショップ(P.120、126)の場所は不明です。OKBストリート内にも花屋は2軒ありますが、いずれも店舗の形状はまったく異なります。

■硝子の手話
P.130の4コマ目。
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「(右手の人差し指を立てて左右に振る)何?」(※P.132の2コマ目も同じ)
→(意訳)「何?何話してたの?」

P.132の4コマ目。
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「(右手の人差し指と親指を立てて左肩からヒラヒラ振りながら右向きに動かす)いろいろ」(※直前の将也の手話も同じです)「(右手の人差し指を立てて左右に振る)何?」
→(意訳)「色々って何?」

P.133の1コマ目。
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「(右手で口元から吐き出す仕草)言い漏らす」
※右手の下向きの人差し指(行く?)+左手で覆い隠す(隠す?)の手話が分かりません。恐らく「隠している」に近い意味だと思うのですが・・・。間違っていたらご指摘ください。
→(意訳)「隠さないで言ってよ!」



P.134 3コマ目
郭町交差点北西角 MAP 32
植野がフラワーショップから去った後(彼女が東側の通りを南向きに歩いて行ったことを記憶しておきましょう)、硝子と少し話をしてから自転車に乗った将也が通り過ぎるシーンです。OKBストリートを再び南下して、郭町交差点を西向きに曲がったところです。ここは大垣公園の南側に当たります。
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P.135 1コマ目
大垣公園南 MAP 33
将也と別れた植野は真っ直ぐ商店街を南向きに歩いて郭町の交差点で西へ。大垣公園の石垣のところまで来て、そこにうずくまっていました。自転車に乗った将也はちょうどその後から追いついた恰好になります。f:id:los_endos:20160813213701j:plain
少し分かりにくいので近づいてみます。植野がいたのはこの樹の前です。f:id:los_endos:20160813214213p:plain


P.162 1コマ目
八幡神社そばの橋 MAP 34
八幡神社は第6巻の硝子の夜の疾走シーンで再び登場します。f:id:los_endos:20160813222855j:plain


P.165 3コマ目
新大橋 MAP 35f:id:los_endos:20160814105602j:plain


P.166 1コマ目
新大橋 MAP 35f:id:los_endos:20160813225353j:plain


P.169 3コマ目
新大橋 MAP 35
硝子の右側に描かれているのはこの銅像の足です。f:id:los_endos:20160814110212j:plain


■硝子の手話
P.169の4-5コマ目。
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「(左手の人差し指を自分に向かって指す)私」「(右手の親指と人差し指で作った輪を喉元から前へ出す)声」「(右手の人差し指を顎に当てる)おかしい」
→(意訳)「私の声、変?」



P.173 4コマ目

新大橋 MAP 35
将也と硝子の二人の関係性が深まるのは、いつも「橋」の上であることは示唆的です。美登鯉橋に続いて新大橋もまた重要な舞台として設定されています。また二人の距離が縮まったといえば、名古屋方面行きのJRの中で将也が硝子からメールを受け取った場面に描かれていた背景が、「鉄橋」を通過している時の風景であったことも思い起こしておくべきでしょう。彼我を分け隔るとともに、両者を繋ぐ絆となりえる両義性を孕んだ場所。それが「橋」の持つ象徴的意義です。
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なおこの場面は映画の予告編にも登場しましたが、ここで京都アニメーション(山田尚子監督)は驚くべき舞台の改変を行っています。f:id:los_endos:20160814112959j:plain
(上)『映画 聲の形』予告編より。南東向きの新大橋の背後に真東を向いた別の風景を合成させている。

お分かりでしょうか?新大橋を捉えたこのカットは下図の①のように南東向きに見たアングルであり、原作の絵もこの角度から見た背景を描きこんでいるのですが、映画版では橋のアングルはそのままで背後に下図②の角度で見える風景を描いているのです。f:id:los_endos:20160814114155j:plain
以下の写真が②のアングルで撮った現地の写真です。①の角度で②の風景が見えることは絶対にありません。意図的に施された風景の改変。そこには必ず演出上の意図があるはずです。その狙いは映画を観てみないことには分かりませんが、私の第一印象としては橋の奥に広がる風景に奥行きが生まれたことで、この重要なシーンにおいて、将也と硝子の二人の存在感が(背景に埋もれることなく)際立って見えるような効果を生んでいると感じられます。f:id:los_endos:20160814114921j:plain
更に言うなら、映画版でこの場面が「橋」の上であることを強調するかのように将也と硝子を奥行きの深い背景を前に、しかも二人を原作とは左右逆の位置で描いているのは、第7巻第54話の(この作品のクライマックスと言うべき)美登鯉橋のシーンと対比させるためではないかという予測を立てておきます。山田尚子監督の前作『たまこラブストーリー』において、飛び石でのもち蔵の告白シーンが、ラストの新幹線ホームでのたまこからの返答シーンと映像表現上、対を成す構造になっていたことを想起しておきましょう。投げかけられたメッセージを受け止めて投げ返す構図は、この『聲の形』の映画版においてもリフレインされるのではないかと、この意図的な改変はそのことを私に強く意識させます。

(※2016/09/17追記:本日、映画『聲の形』を鑑賞して、上記の推察は間違っていたことがわかりました。クライマックスの美登鯉橋の将也と硝子の位置関係は、なんと原作と逆に描かれていました。原作では(左)将也-(右)硝子ですが、映画ではこれが逆転して(左)硝子-(右)将也となっています。うーむ(笑))


P.173 5コマ目
新大橋 MAP 35
P.166の1コマ目と基本的に同じアングルです。右側に見える建物は商店街をもう少し北に進まないと見えてきません。f:id:los_endos:20160814124747j:plain


P.177 1コマ目
新大橋 MAP 36
新大橋で硝子に別れを告げて、将也は自転車を川沿いに北西方向へ進みます。その背中に呼びかける硝子の「聲」。f:id:los_endos:20160814130231j:plain


P.180 3コマ目
新大橋 MAP 35
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P.182 1コマ目
新大橋北西 MAP 36f:id:los_endos:20160814132159j:plain
将也の右側にある箱状のものは電気メーターのようです。f:id:los_endos:20160814132434j:plain

■将也の手話
「(両手の人差し指を胸の前で交互にくるくる回す)手話」
→(意訳)「手話!手話!」

 

■「もっとあなたのことが知りたい」
突然現われた植野の存在は、将也と硝子の二人の心に小さな波紋を巻き起こしました。無理してつるんでいるわけじゃない、友達ごっこなんかじゃない。そうじゃないと分かっていても、その言葉を明確に否定しきれないもどかしさ・・・。二人はごく自然に「もっとあなたのことが知りたい」とお互いに願うようになります。

第3巻は初めて登場する舞台背景の多い巻です。それはMAPを見ていただければ一目瞭然で、第3巻での初出を表わす「濃い青」のマーカーの数は第1巻、第2巻の2倍以上あります。そういう事情もあって本稿はとりわけ長い記事になってしまいました。舞台の数が増えるということは、それだけ登場人物の動きが活性化し、物語が大きく動きはじめたことを意味します。


第4巻の記事へ続きます。 

当記事に掲載した『聲の形』、および映画『聲の形』の画像および台詞は、著作権法第32条に定める研究その他の目的として行われる引用であり、著作権は全て、大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会に帰属します。

 

(2016/8/23 記)




*1:820円だと、お釣りは100円玉1枚、50円玉1枚、10円玉3枚の計5枚描かないといけないわけで・・・。