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【舞台探訪】『聲の形』(原作):第2巻

舞台探訪: 聲の形

【注意!】当記事では原作の内容の詳細について触れることになります。原作未読の方でネタばれを避けたい方はここから先へは進まないでください。

大今良時さんの漫画『聲の形』の舞台探訪の記事、今回は第2巻の紹介です。

聲の形(2) (講談社コミックス)

聲の形(2) (講談社コミックス)

 

→前回までの記事はこちらです。
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第1巻
→本稿以降の記事はこちらです。
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第3巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第4巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第5巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第6巻
・【舞台探訪】『聲の形』(原作):第7巻

■第2巻について

すべてに絶望して4月15日(火)*1を最期に自らの死を選ぶ決意をした将也。この世から消えるその前に硝子に謝っておきたい・・・。その一心で彼女が通う手話スクールを探し出し、ついに硝子と再会した将也は、その直前まで考えもしなかった言葉を彼女に手話で伝えます。
「俺とお前、友達に・・・なれるか?」

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(上)『聲の形』第2巻P.20より。

これは第1巻のP.114で硝子が将也に伝えようとしたメッセージのリフレインです。あの日の硝子の手話の形を憶えていて、今度はその意味を分かった上で同じメッセージを将也から硝子に投げ返したわけです。P.18~20の将也の台詞の合間にカット・インする映像は、将也の脳裏に浮かんでいたあの日の二人の姿。


いったい、いつから将也は手話を学んでいたのでしょうか?第1巻のP.179では中学生時代の将也が手話の本を手に取るシーンが描かれています。

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(上)『聲の形』第1巻P.179より。

周囲から孤立して生きるより他なかった将也は、いつしか自分がかつて同じ境遇に追い込んでしまった硝子のことを想う時間が増えていたのかもしれません。そんな彼があの日あの時、硝子が伝えようとした"聲の形"の意味を知りたいと願うようになったとしても何ら不思議ではありません。この世から消えてしまうその前に硝子に会ってお互いのこえで語り合いたい・・・。そんな将也の想いは期せずして叶うことになります。ただし死を前にした訣別の言葉ではなく、新たな心の紐帯を結ぶ生きるための言葉として。


第2巻では将也の友達となる永束友宏(ながつか・ともひろ)、硝子の妹の西宮結絃(にしみや・ゆずる)との新たな出逢いがあります。一度は止まるはずだった時間が再び動き出し、未来などなかったはずの将也の世界が次第に外へと開かれていきます。

 

■舞台探訪 『聲の形』(原作):第2巻
※各シーンの場所情報はGoogle Mapにまとめてあります。各々の場所を確認されたい方は、当記事末尾に掲載しているMAPを拡大してご覧下さい。

表紙絵
美登鯉橋 MAP 03
『聲の形』のコミックスの表紙絵は、毎回、その巻を象徴する場所を背景として左に将也、右に硝子の立ち姿が描かれています。将也の目線は一定ではありませんが、硝子は必ずこちら(本を手に取った私たち)を見ています。例外は第6巻で、この巻のみ将也の姿はなく、硝子がただ一人虚ろな表情で水底を眺めています*2。また最終巻である第7巻の裏表紙で将也と硝子の仲間たちの姿が初めて描かれるのも印象的かつ象徴的です。

さて第2巻の表紙絵は満開の桜に彩られた美登鯉橋です*3

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(上)桜満開の美登鯉橋にて。第2巻の表紙絵と合わせての撮影(2016/4/2撮影)。
(下)同じく美登鯉橋にて。第2巻の裏表紙のイメージで(2016/4/2撮影)。

 

回想シーンの小学生・中学生時代を除けば、『聲の形』は将也や硝子たちが高校三年生になった4/15(火)から始まり、ひと夏を経て、3月の卒業を迎えた後、成人式の日の場面で終わる物語です。劇中では桜満開のシーンは一度もありません*4。舞台となった大垣市内の桜は例年3月末から4月上旬に満開を迎えるので、遅咲きでもない限り、4月15日にはほぼ散ってしまいます。そのため、桜の描かれた美登鯉橋は本編には描かれることのない第2巻の表紙絵だけのものと言えるのですが、驚いたことに映画版の最初のキー・ビジュアルや予告編ではこの橋周辺の桜がふんだんに描かれていました。

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(左)最初に発表された映画『聲の形』のキー・ビジュアル。
(右)映画
『聲の形』の予告編より。

これは原作にはない映画ならではの改変と言ってよく、逆に言えば、そこに山田尚子監督の演出とビジュアルへのこだわりが窺えます。第1巻の記事内で『聲の形』の「橋」と「水」の隠喩について軽く触れましたが、映画版はこれに加えて「桜」が重要なモチーフになるかもしれません*5

以下、桜満開の美登鯉橋(四季の広場)周辺の写真を何枚か掲載します。撮影はいずれも2016年4月2日です。

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■硝子の手話
P.12の1コマ目
「台詞」として書かれていますが、指の動きがポイントですので解説をしておきます。
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「(両手の人差し指を互い違いにクルクル回す)手話」
(意訳)「なんで手話できるの?」


P.25 2コマ目
美登鯉橋 MAP 03
美登鯉橋の下はその名のごとく実際にたくさんの鯉がいます。

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硝子のように鯉にエサ(パン)を与える人は引っきりなしにこの橋へとやってきます。普段は上の写真のように悠揚と泳ぐ鯉の群れも、ひとたびパンが降ってくるやケダモノのごとく食らいつき、そのビチビチという音は橋の上からでも聞こえるほどです。

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P.32 1コマ目
美登鯉橋 MAP 03
硝子の母がノートを投げ捨てた方向は橋の西側(=鯉にエサをやる位置の反対側)です。従って、このカットの奥は橋の北詰方向です。

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P.34 6コマ目
美登鯉橋 MAP 03
川底から伸びる水草。その鮮やかな緑色。映画の予告編(特報)でも印象的でした。
下の写真は水門川の少し上流で撮影したもので、美登鯉橋の下ではありません。参考程度に掲載しておきます。

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(上)映画『聲の形』予告編(特報)より。


P.41 4コマ目
美登鯉橋 MAP 03
右のコマの将也の背後にある建物は今はありません。小さいコマながらも屋根まで含めた往時の姿の全景が描かれたカットですので、ここでご紹介しておきます(写真はスカイDJ様ご提供)。

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■「一度」「諦めたけど」「あなたが拾ってくれたから」
この時、なぜ硝子は水に飛び込んでまでノートを探そうとしたのでしょう?かつて自分が酷い目に合わされた頃の嫌な記憶を思い出させるだけの忌まわしいノートだというのに。第2巻P.43で将也の「そのノートそんなに大事?」の問いに対して、硝子は「一度」「諦めたけど」「あなたが拾ってくれたから」と答えます。

筆談ノートは手話と同じく硝子にとって大切な"聲の形"です。彼女と他者をつなぐコミュニケーションの重要なツールです。「このノートを通してみんなと仲良くなりたい」という純粋な想いのこもったものでした。彼女はノートにどれほど酷い罵声を繰り返し書かれても、そのように書かれるのは自分が悪いからだと思い込み、怒ることもせず、「ごめんなさい」としか返しませんでした。そんな彼女は何を「諦めた」のでしょうか?


その答えは後に第6巻P.175の硝子の回想で明らかになります。未読の人には重大なネタばれになるので、以下の文章は第6巻まで読みきった人、もしくはネタばれを躊躇しない人だけ読み進んでください。

(ここから)
硝子の母に投げ捨てられた筆談ノートは、小学校時代の将也に「友達になりたい」と手話で告げた後、将也の手で学校の池へと投げ込まれたものです(その後、いじめにあった将也が池の中に放り込まれたときに見つけて拾い出したわけですが、当然そのことを硝子は知りません)。硝子の「みんなと仲良くなりたい」「友達になりたい」という想いは、ノートを投げ捨てられるという形で無惨にも踏みにじられました。そしてそのことにショックを受けた硝子は、一度はノートを池の底から拾い出したにもかかわらず、自らの意志でそれを手放し、再び水の中へと沈めてしまいます(第6巻P.175)。

つまり硝子が「一度」「諦めた」のは筆談ノートを探すというようなことではなく、「このノートを通してみんなと仲良くなりたい」という想いそのものを「諦めた」のです。筆談ノートを水に沈めることは、ここでは人とのつながりを断念することの隠喩です。彼女は「みんなと仲良くなる」「友達になる」「人とつながる」ことを自ら諦めてしまったのです。このことは硝子に大きな絶望感を与え、ついには「死にたい」(第6巻P.52)と思うほどに彼女を追いつめてしまいます。
(ここまで)

しかしそのノートを他ならぬ将也が拾っていたことを知った硝子は、そこに人と人とが繋がりあえる一縷の希望を見たのかもしれません。だからこそ小学校のあの日のように再び水の中に投げ込まれてしまった筆談ノート(=将也が拾ってくれたことで「人とのつながり」の可能性を取り戻したノート)を今度こそ失いたくないという想いで自ら飛び込んだのでしょう。この時、ノートは筆談帳という意味合いを越え、復活と再生を象徴するイコンへと転じています。

「一度」「諦めたけど」「拾ってくれた」ことは硝子の心に大きな変化を与えたはずです。そして将也もまた、この時を境に「一度」「諦めた」生きる希望を取り戻します。4/16からのカレンダーを復活させた将也の脳裏によぎる"ノートを捨てた自分とそれを拾った自分"のあの日のイメージがそのことを印象づけます。

なお、「水の中へ投げ込む・飛び込む・落下する・沈む(と、それに対する浮かぶ)」という垂直方向のモーションは、『聲の形』全編を貫く重要な視覚の運動性のひとつと言えます(もうひとつは「橋」に集まる・渡る・越えるといった水平方向のモーションです)。加えて、川や池などの「水」の中に飛び込んで全身ずぶ濡れになる人物は、物語中、将也と硝子の二人だけに限られるという点にも注意が必要です(他の人物が濡れるときは雨に降られる、ペットボトルの水を浴びるなどの受動的な場面であって、自ら能動的に水中に身を投じるのはこの2人しかいません)。この辺りについては別稿で触れます。



P.95 5コマ目
橋 MAP 09
橋の上から魚の死骸を掬い取る西宮結絃(にしみや・ゆづる)。この場面は新大橋から北西に川を辿った一本目の橋の付近です。

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P.100 2コマ目
橋 MAP 09
上の場面とほぼ同じ場所。道路を西向きに見た構図。

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■硝子の手話
P.109の4-5コマ目
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「(開いた手のひらの親指と人差し指で顎をつまんですっと下に降ろす)幸福、(顔の前でぐっと拳を握る)良い」
→(意訳)「幸せそうで良かった」


P.112 4コマ目

ウォーターガーデン MAP 05
アングルは合っていませんがご容赦ください。その代わり全体が分かる写真をチョイスしました。

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■"デラックス"
P.118の結絃の回想シーン。川の中で(ここでも硝子は水の中に入っています)補聴器を探す硝子。硝子に石を投げつけて遊んでいた三人組の中に、やたら図体のでかい、首にタオルを引っ掛けたオールバックの少年の姿があります。これは第1巻で将也の靴を盗んで殴られた少年(通称"デラックス")と同じ人物でしょう(第1巻P.32-36)。

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(左)『聲の形』第1巻P.34より。
(右)『聲の形』第2巻P.118より。

この結絃の回想シーンの時期は、硝子が将也の学校(=水門小学校)に転校してくる前です。ここから分かることは、硝子は前の学校でも激しいいじめに遭っていたこと*6、その時、硝子が通っていたのが第二小であること*7、将也と硝子は"デラックス"を介して間接的な繋がりがあったこと、などでしょうか。

なお余談ですが、この回想シーンで結絃が着ている服は、第4巻の番外編『姉妹』で硝子が着ている服のお下がりです(第4巻P.184-185)。

■長い髪の硝子/7か月前の謎

上述の内容をもう少し分かりやすくするために、硝子が将也のクラスに転入してくるまでの各場面を時系列で整理してみましょう。それは硝子と結絃の髪の長さで推測できます。

①第二小時代の硝子。石を投げられ補聴器を川へ流される(第2巻P.114-120)。
②上記①の後、HAIR MAKE ISHIDAで順番待ちをする硝子。将也が目撃(第1巻P.27-28)。
③硝子、HAIR MAKE ISHIDAで長い髪を切る。迎えに来る硝子の母(第1巻P.59-66)。
④自宅で硝子の髪を更に短くしようとする母。自ら髪を切り落とす結絃(第4巻P.158-161)。
⑤第二小の校内で"デラックス"に突き飛ばされる硝子の姿(第1巻P.32の2-3コマ)。
⑥上記⑤の直後、将也に殴られる"デラックス"(第1巻P.36)。
⑦硝子の水門小への転入(第1巻P.50)。


ここでひとつ奇妙なのは③を描く「番外編」(第1巻)のタイトルが『7か月前』と記述されていることです。⑥の後、硝子の転入までそれほど日数の開きがないと思われることから、④と⑤の間が「7か月」ということになり、随分期間が開いているように感じられ、その点にいささかの違和感を覚えます。第1巻P.67の黒板の日付(=⑦の後)には「4月11日」とありますので、硝子は6年生になる新学期に水門小へ転校してきたことになります。その7か月前といえば前の年(5年生)の9月上旬です。それが①~④の時期だとすると、やはり④と⑤の間で「7か月」経っていることになり、どうもしっくり来ません。この辺りが意図的なものなのか設定上のミスなのかは不明です。

その後の動きを更に追ってみましょう。第1巻P.119の「たった5か月で」という校長の発言から、将也が糾弾されることになった学級会は9月中旬頃であるとわかります。硝子へのいじめは5か月以上も続いていたわけです。そして、この日を境にいじめの矛先は将也へと変わります。池に放り込まれた将也が拾い上げた硝子のノートに9月の日付があるのが確認できます(第1巻P.128)。そこからどれくらい日数が経ったのかは推測しかねますが、将也と硝子が取っ組み合いの大喧嘩をした後、1か月経って不意に硝子が転校していったことが告げられます(P.165)。それが10月か11月頃のことだとすると、「卒業するその日まで律儀に続いた」将也の机のチョークの落書きは、4-5か月間毎日続いていたことになり、その執拗さに慄然とさせられます。将也へのいじめも相当に酷いものだったのです*8


P.122 5コマ目
夜道の結絃 MAP 10
夜道をぶらつく結絃。この場面の直後に帰宅していることから、西宮家のあるマンションはこの近くにあると推測できますが、果たしてどうでしょうか?*9

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■ニチニチソウ
上の場面の直前、結絃の回想シーンの硝子の背中姿は、鉢植えから花を取っているように見えます。ここで硝子が手にしている花は、第1巻P.155で教室へ持ってきて花瓶に生けた花でしょう*10。この花は「ニチニチソウ」。ニチニチソウは第3巻で明らかになる硝子のメールアドレス、更には第7巻の成人式で硝子の髪飾りとして登場するこの物語のキー・アイテムです。花言葉は「楽しい思い出、生涯の友情」。小学校の頃の硝子にとって、この花は彼女の願いそのものだったのかもしれません。そしてそれは大人になった今も大切な祈りの形であり続けているようです(ニチニチソウについては各巻の記事内で再度取り上げます)。

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(左)『聲の形』第1巻P.155より。
(右)『聲の形』第2巻P.122より。

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(上)ニチニチソウの可憐な花。


P.127 2コマ目
美登鯉橋 MAP 03
橋の上から西を向いたアングル。二人の背後中央で十字に光る紋様は、結絃の構えたカメラのレンズの反射です。

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P.127 7コマ目
美登鯉橋 MAP 03
橋の西側です。原作のコマとはアングルがずれた写真ですが、下から見上げた橋の様子はこれで分かると思います。

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■硝子の手話
P.130-131にかけて珍しく激昂した硝子は、結絃に対して矢継ぎ早に手話で抗議します。この一連の場面の手話はおよそ下記の通りです(※様々な手話の解説書を参考にさせていただいていますが、まだまだ勉強が足りません。私の解釈に間違いがあればご指摘ください)。

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「(指文字の「め」)目、(指差し)あなた、(親指と人差し指で丸印を作って胸元を叩く)心」
(意訳)「なに?その目は?なにを考えているの?」

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「(親指を指す)彼に、(右手の親指と人差し指で輪を作り、ひたいの位置から指を開いて手のひらを縦に下ろす)ごめんなさい」 
(意訳)「彼(将也)に謝って」

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「(右手を横向きに左肩から斜め右下へ下ろす)仕方ない、(両人差し指を寄せて、曲げる)一緒に、謝る」
→(意訳)「仕方ないわね、じゃあ、わたしと一緒に謝りに行きましょう」

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「(右手で自分を指差す)私、(左手で相手を指差す)あなた、(両手を一緒に下に向ける)放っておく」
→(意訳)「あなたなんていらない。もう勝手にしなさい!」



P.134 2コマ目
大垣公園 MAP 11
大垣城の南西に広がる大垣公園内にある遊具です。

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この遊具の中央に赤と黄色に彩られた丸窓と三角窓が見えますが、ここが空腹で動けなくなった結絃が寝ていた空中回廊です。大人では中に入るのが難しいほどの狭い空間で、上の写真左側の東屋の奥に見える丸い出入口から入ることができます。P.135でマリアが将也を連れていったのもここです。

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(上)大垣公園の遊具。結絃が倒れていた空中回廊。
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(上)空中回廊内への出入口。

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(上)空中回廊の内部。一番奥左の丸穴が将也が入ってきた出入口。

将也の姪であるマリアは将也の姉とブラジル人のペドロとの間に産まれたハーフの少女です。いじめを題材とする同作において、ある意味、最もいじめの標的になりやすい存在であるはずのマリアは、およそそのような暗く悲しい目に合うことから先天的に守られているような天真爛漫な存在として描かれています。この設定が上手い。ともすれば重くなりがちなこの作品の中で、彼女は一服の清涼剤のような印象を与えてくれます。


P.156 1コマ目
虹の橋 MAP 07

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P.157 1コマ目
音のモニュメント ハーピアン MAP 06

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硝子が鳴らしているものは、第1話の記事内でも紹介した虹の橋に設置されている楽器「Harpian(ハーピアン)」です。原作では「ボーン」という音で書かれていますが、実際は金属的な高い音で、これは音声サンプルを聴いていただく方がイメージを掴みやすいでしょう。以下の動画は現地で私が鳴らした音です。ランダムにキーを叩いているのでメロディーはありません。


大垣市「四季の広場」:虹の橋の上にあるHarpian(ハーピアン)の音

P.159 1コマ目
電話ボックス MAP 08
虹の橋の南詰から道路をもう少し南へ進んだ辺り、第1話の記事「P.132 1コマ目」で紹介した場所に電話ボックスがあります。このカットはこの位置から振り返って橋の方向を見たアングルです。

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うかつにもこのアングルからの撮影を失念していたため、今回はGoogle Street Viewの画像をお借りしてお茶を濁すことにします。次回訪問時の宿題ということで。

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(上)Google Street Viewより(2015年5月撮影の画像)。

P.159 2コマ目
美登鯉橋(北詰) MAP 12
橋の北詰から西方向を見たアングルです。

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将也が身を隠している街路樹は上の写真の撮影ポイントの少し右側にあるのですが、この木を入れて撮ると以下のような状態になってしまい、奥の東屋が見えなくなってしまいます。

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(上)原作の描写通り、奥の東屋と手前の住宅の壁に位置を合わせて撮影すると、将也が隠れていた街路樹は右側の位置に来てしまう。

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(上)原作通り、街路樹を画面左側に持ってきたアングル。しかしこれでは奥の東屋が壁に隠れてしまって見えない。

つまりこのカットは、将也が身を隠して西宮母娘の様子を窺うというシーンを描くために街路樹を左に寄せて描かれたものでした。なお、硝子と母親のそばに立っている男性は、4コマ目の無線機から見て警察と思われます。

P.166 1コマ目
美登鯉橋(北詰) MAP 12
橋の北詰。北方向のアングル。

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硝子の母の持ってきた3本の傘。そのうちの1本は将也に差し出されました*11。5年前の怒りと、娘を探し出そうと骨を折ってくれたことへの恩義の板ばさみとなった硝子の母はこのときどのような思いを抱いていたのでしょう。あがいてもあがいても過去に犯した過ちは償えないものなのか。将也は硝子の母の突き刺すような言葉を自らの心に打ち込むようにして受け止めます。

前夜からの将也と結弦、橋の上の硝子、そして朝の硝子の母と将也、それを車中から見守る将也の母。再び邂逅した二つの家族に降りそそぐ雨。空は少し明るくなり雨はやがて上がろうとしています・・・*12

P.174 1コマ目
銭湯「恵比寿湯」 MAP 13
「水門の里」と名づけられた銭湯は、大垣競輪場にほど近い場所にある「恵比寿湯」がモデルです。

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私が取材に行ったのは昼と夜の2回でしたが、いずれも営業はされていませんでした。以下のような看板(営業日:土・日 営業時間:16:00~21:00)が出ているので、もしかするとタイミングが合えば入浴できるかもしれませんが、廃業したという噂もあり、詳細は未確認です。

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P.177 4コマ目
羽衣公園前 MAP 14
先ほどの銭湯の近くにある羽衣公園の前です。

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P.178 1コマ目
羽衣公園前 MAP 14
折角なので夜に撮影した写真で合わせてみます。実際の公園の柵は金属製でした。昔は原作のような木製だったのでしょうか。

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P.178 3コマ目
公園前 MAP 14
東向きのアングル。橋を渡った川の向こうに銭湯があります。

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P.182 5コマ目
公園前 MAP 14
上のカットから少し北東を向いたアングル。こちらも夜の写真で合わせてみましたが、暗いし手振れはあるしで撮った写真はどれも酷いものばかりでした。

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そこで日をあらためて昼間に撮影し直しました。こうして明るい陽の下で見ると、鉄柱に何やらぶら下がっていることに気づきます。原作の絵にもこの物体は描きこまれています。これは何でしょうか?

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近寄ってみると、大垣市役所と大垣警察署によるゴミの不法投棄禁止の看板でした。原作のロケハンの当時から今も変わらずここにあるようです(若干角度が変わっているようですが)。

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P.188 6コマ目
川沿い1 MAP 15
前のカットの橋を渡って川の東側の土手を北向きに歩いています。

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奥のマンションは下の写真のようにやや西側から見た角度で描かれています。

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下の写真は昼間に撮影したもの。硝子が靴を脱いで歩いていった道がはっきりと分かります。

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P.189 2コマ目
川沿い2 MAP 16
前のカットを川の西側から真横に見た場面なのですが・・・実際の風景を忠実に描いたものではなく、これはもう雰囲気を感じとることで良しとするしかありません。写真の中央やや右奥に見える塔状の物体は、先ほどの「恵比寿湯」の煙突です。

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■真実の笑顔/二人のショーちゃん
「西宮、あんな風に笑うんだ 初めて見た・・・・・・」
本心を偽った作り笑顔でも他人との軋轢を避けるためのものでもない、心の底からの嬉しさに満ちた硝子の自然な笑顔。実の妹の結絃でさえ、そんな硝子の横顔を驚いたような表情で見つめています。硝子との再会が将也に新たな生きる道筋を示したように、硝子もまた将也と出逢ったことで心の中に大きな変化が生まれました。しかし、過去の嫌な思い出を忘れてしまうことは、硝子が喪った時間を無かったものにすることではないのか・・・。複雑な思いを抱えたまま将也の逡巡は続きます。


第3巻の記事へ続きます。 

当記事に掲載した『聲の形』、および映画『聲の形』の画像および台詞は、著作権法第32条に定める研究その他の目的として行われる引用であり、著作権は全て、大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会に帰属します。

 

(2016/8/19 記)

 

*1:同じ曜日の並びから物語は2014年であると思われます。

*2:第6巻では物語の語り手である将也の意識が消失しているので、彼の姿も「消えている」訳です。

*3:美登鯉橋を含む四季の広場一帯は桜の名所として知られ、毎年大変な見物客で賑わいます。桜満開の土曜日の真昼にこの写真を撮影できたのは幸運でした。

*4:第1-2巻の一部の樹木は開花した桜のように見えなくもないのですが、桜吹雪などそれと分かるような描写をしていないことからみても、将也と硝子が再会した4/15時点ですでに桜は散っていたと考えるべきだと思います。

*5:桜といえば山田尚子監督の『けいおん!!』(=第2期)では、シリーズの始まりと終わりを橋渡しする重要なキーアイテムとして桜の花弁が描かれていました。

*6:後に第5巻で元担任である竹内が「前の学校でも同じ失敗したらしく」という発言をしています(P.51)。

*7:"デラックス"は第二小の生徒であるとの島田の証言(第1巻P.29)、正門の描写(同P.32)など。

*8:しかも将也は中学生に上がってもなお、ずっと陰湿ないじめを受けていたようです(第1巻P.183)。

*9:後に第6巻で家を飛び出した硝子が美登鯉橋まで夜道を駆けるシーンでも、この近くの八幡神社の横道を走っている描写があるので、場所的な設定はこの界隈で良いのだと思います。ただし川に面しているようなマンションは実際にはありません。

*10:第2巻P.122の結絃の回想イメージは、硝子が将也と取っ組み合いの喧嘩をした日の記憶から想起された登校前の朝の記憶だと思います。

*11:傘を手渡す直接の描写はありませんが、P.162-163、P.166の各コマでそれは明らかです。そしてそれは硝子と結絃の見ていないところで行われました(第3巻P.5参照)

*12:この一連の場面でずっと木陰に身を潜めていた将也の姿に硝子はまったく気づいていません。硝子の母と将也の会話も硝子には聞こえていないので、そこに将也がいたことすら知らなかったはずです。第3巻の硝子のメールの文章にもそれは明らかです。