1/9深夜から京都アニメーション(以下、京アニ)の山田尚子監督の新作『たまこまーけっと』のTV放送が始まりました。既に当ブログでは、これまで発表された版権絵と番宣PVを元に過去4回プレ舞台探訪の記事(先行上映会の記事の末尾に掲載した写真を含めると計5回)をリリースしてきましたが、PVで登場したカットはTV放映された第1話に全て登場しますので、本稿ではこれまでの写真もまとめ直して再掲載します。
初回放映で特筆すべきは、EDの取材協力のクレジットに「学校法人聖母女学院」の名前があったことでしょう*1(取材協力先の詳細については【解説1】で述べます)。
(左)たまこのバトンは魔法のステッキ? (右)EDに登場した取材協力のクレジット
この学校法人は1/4付でリリースした【舞台探訪】『たまこまーけっと』:PV探訪最終版の【解説2】で、たまこの着用している制服を手掛かりに「京阪電車F森駅近くの某女子高で仮にS高校」と事前に推理した「京阪電車藤森駅近くの京都聖母学院高校」の運営母体です。同校はカトリック系の現役の女子高であり、取り扱いには細心の注意を払う必要があると判断したため、これまで記事内では意図的に情報を伏せていましたが、このたびのEDで情報解禁となったので今後は差し障りのない範囲でご紹介していくことにします。
ただし取材協力しているとはいえ、何と言ってもここは女子高です。現地での迷惑行為は絶対に厳禁です。当然のことながら生徒にカメラを向けるのもNGです。くれぐれも地域住民や関係者との間でトラブルを起こさないよう万全の注意を払ってください。これは「出町桝形商店街」においても同様です。
なお、第1話の劇中に校舎と体育館が登場したことで、同校が場所のモデルだけでなく建物のモデルでもあることを確認しました。EDに登場する煉瓦造りの建物もこの学校のものです(【舞台探訪】57参照)。同じEDに描かれている廊下も多分同校の内部だと思われますが、こちらは情報がなく取材困難でもあるため現時点では未確認です。
では第1話(OP/ED含む)のキャプチャと写真、及びMAPをご紹介します。並びは登場順です。
モデルとなった商店の名称の内、出町桝形商店街の店舗については特別に『』で囲っています。また【舞台探訪】の各連番内にある(西向き)(東向き)という言葉は、カメラアングルが向いている実際の方角のことを指します。
【舞台探訪】 第1話
アバンタイトル
01 京阪電車藤森駅東改札口付近
02 同上
例によってコンクリートのひび割れや染みの再現性のレベルが高いです。
03 琵琶湖疏水沿いを北向き
18 『セルフ岸本屋・ダイソー』
22 『京漬物 出町なかにし』前(西向き)
23 『セルフ岸本屋・ダイソー』前(西向き)
31 十字路を北上(東向き)
キャプは右から左へパンする連続場面を1枚に結合したものです。たまこが本屋で買った「とりのほん」のモデルは、この本ではないかと思われます。
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32『地酒地焼酎 八百屋(Yaoya)』前(南向き)
35 同上(西向き)
公式MAPで紹介されていた通り、2つの餅屋は桝形アーケードの外にあります。「たまや」が描かれている場所には、地酒地焼酎の居酒屋『八百屋(Yaoya)』さんがありますが、上掲の写真の通り、建物の形状は全く違います。また「たまや」の真向かいにある設定の「大路屋」の場所に建物はなく、3枚目の写真のようにガレージ状のスペースが広がっています。両店舗とも場所的にはここで良いのですが、建物モデルは別にあるか、或いはフィクションの産物であるのかもしれません。
38 同上
20mm程度の広角では到底全景を収めることが出来ません。強引に結合してみましたが歪みが酷い・・・。
こちらは16:00になって暖簾がかかった直後の様子です。劇中と同じく右が男湯、左が女湯です。
風呂屋の「うさ湯」の建物モデルは、EDクレジットにある通り、中京区堺町通錦小路下ルの錦湯さんですが、公式MAPおよび第1話の描写から、場所のモデルは出町桝形商店街の西口に面した寺町通にある京漬物『野呂本店』さんであることが分かりました。
39 『京漬物 野呂本店』前あたり(北向き)
41 錦湯
中央の写真は暖簾がかかる前の状態。真ん中の柱に「本日あります」の札が掛かっています。
43 錦湯の脱衣場
この写真は、錦湯のご主人の許可を得て、脱衣場に誰もいなくなったタイミングを見はからって撮影させて頂いたものです。別の角度から撮ると風呂場の内部が写り込んでしまうため、今回はこの写真と後のもう1枚しか撮っていません。撮影直前に団体客がどっと入ってきたので慌ててシャッターを切ったということもあり、キャプとの一致度は甘目ですが、それでも実在する各パーツが比較的忠実に描き込まれていることがよく分かります。なお、アニメと違って長椅子の後ろの壁は鏡です。もち蔵の背後に二階へ上る階段が描かれている別のカット(下図参照)がありましたが、その階段が鏡の中に写っています。
なお錦湯さんでは、入浴時間外に定期的に音楽ライブや落語会、古本市、浴衣即売会など様々な催しが定期的に行われていますので、そうした機会を利用すれば浴室も含めた内部の撮影も比較的容易だと思います。
柳行李と木製の脱衣箱はアニメの中でも描かれていました。
ここで一点注意事項を。錦湯さんもそうですが、京都のお風呂屋さんはあくまで地元の方が利用することを前提としています。自前のタオル・石鹸・洗面器を持参するのが常識で、いわゆるスーパー銭湯や日帰り温泉施設などのように、手ぶらでフラリと入りに行くようなところではありません。一応、番台でタオルなどは販売していますが、それも数に限りがあります。遠方からお越しの方でも、出来るだけタオルや石鹸を持参して下さい。くれぐれも大人数で押しかけて、お店や常連さんの迷惑になるような行為だけは慎んで下さい。
Bパート
44 『八百屋(Yaoya)』前
先のNo.35からもう少し引いた位置からの撮影です。キャプには描かれている右側の美容室が架空のものであることが分かります。
46 同校の体育館
No.46のカットは校内から見た「体育館の入口」方面のもの(恐らく方角は南東向き)なので、学校関係者以外の撮影はできません。写真は外から撮ったもので体育館の裏側に当たります(北東向き)。なお同校の卒業生と思われる方のtweetでこのような写真がアップされていました。体育館の入口側を横側から撮影したもので、アニメに描かれている渡り廊下と校舎との位置関係がよく分かります。
47 体育館内カット
こちらも撮影は出来ませんが、学校のホームページに参考になる写真が掲載されていましたのでご紹介しておきます。
48 鯖のオブジェのある十字路あたりの地面のタイル絵
桝形アーケード内にはこのような魚のタイル絵が幾つもあり、すべてデザインが異なります。
49 『喫茶華波&BAR華波様楽』前(※同店は、昼の喫茶店は「喫茶華波」、夜のBARの時は「華波様楽」と名前が変わります。以後は便宜上『華波』と略させて頂きます)
店舗は階段を上がった2階にあります。
50 『華波』店内
この写真は厨房内部からのアングルです。衛生管理上、関係者以外の厨房内への立ち入りは不可とのことなので、私のカメラを『華波』のマスターに渡して代わりに撮っていただきました。
51 同上
アニメでは小さなクラゲが泳いでいる水槽ですが、『華波』さんの実際の水槽の中にはウーパールーパーが鎮座していました。マスターも「アニメではクラゲでしたよね」と既に第1話をよくご存知の様子でした。
それから、このカットでマスターが手にしているLP盤のアルバムジャケットは、米国のソウル・ファンク・バンド、アイズレー・ブラザーズ (The Isley Brothers) の1972年のアルバム"Brother, Brother, Brother"です。
54 同上
この後、真横から店内を捉えたカットが登場していましたが、実際の『華波』さんの店内はそれほど幅がないので、あのような広々とした空間のカットを撮ることはほぼ不可能です。
56 五重塔
このカットは舞台探訪関係者がめいめい探し回ったのですが、合致すると思われる場所はいまだに見つかっていません。この写真は京都伊勢丹百貨店の立体駐車場(M5階)から撮影したものです。あくまでイメージ写真という扱いで掲載しておきます。
ED
57 京都聖母学院高校
こちらも撮影出来ない場所なので写真はありませんが、同校の校舎であると断定できる写真がホームページに掲載されていましたので、参考までに紹介しておきます。
写真は上掲のリンク先ホームページ掲載のものです。
MAP
より大きな地図で TVアニメ『たまこまーけっと』舞台MAP(出町桝形商店街エリア) を表示
より大きな地図で TVアニメ『たまこまーけっと』舞台MAP(錦湯エリア) を表示
より大きな地図で TVアニメ『たまこまーけっと』舞台MAP(藤森エリア) を表示
地図は縮小表示していますので、必要に応じて上記の”より大きな地図で~”の後のリンク先をクリックして拡大して下さい。ブラウザがIEなら、アンカー上でマウスを右クリックして<新しいウィンドウで開く>を選択頂ければ、別ウィンドウが開くので便利かと思います。
以下、解説編です。
【解説1】 取材協力のクレジットについて
第1話EDで「取材協力」としてクレジットされていたのは次の通りです(敬称略)*2。
・森脇清隆(京都文化博物館)
・京都 出町桝形商店街
・学校法人聖母女学院
・出町ふたば
・京都 養老軒
・錦湯
・平野とうふ
これまで拙稿の中で言及もしくは発言を引用させて頂いたことのある関係先・関係者を除けば、今回初出となるのは「京都 養老軒」「錦湯」「平野とうふ」の3つです*3。
「錦湯」さんについては、【舞台探訪】37、38、41、43で紹介済みですので割愛します。なお「星とピエロ」のマスターのモデルは、錦湯のご主人の長谷川さんでは?という説があります。言われてみるとレードマークの帽子がよく似ています。
「京都 養老軒]」さんは西院にある老舗の菓子屋さん、「平野とうふ」さんは姉小路麩屋町角にある老舗の豆腐屋さんです。1/13時点の情報で、どうやらこの2店については技術協力という形で関与されているらしいことが分かりました。今後背景に登場するかどうかは不明です。
【解説2】 うさぎ山商店街東口の不思議
PVを初めて見た時からずっと不思議に思っていることがひとつあります。出町桝形商店街(=うさぎ山商店街)のアーケード東出入口がこれまでただの一度も描かれていない点です。
出町商店街全体の四角のエリアの中心を東西に貫くアーケード部分が桝形商店街に相当しますが、京阪電車・叡山電鉄の出町柳駅や幹線道路である河原町通、或いは観光名所の下鴨神社や鴨川デルタはすべてアーケードの東側に位置しており、京都御所や同志社大学に用事があるか周辺の住民でもない限り、一般的には東側がメインの出入口となります。
青線部が桝形商店街のアーケードです。
しかし第1話でたまこが出入りするのは西口に限定されており、アーケード最東端に位置する書店まで背景に登場させておきながら(【舞台探訪】21、29)、なぜか東側の出入口やその向こう側の風景は描かれていません。勿論、まだ第1話が終わったばかりで単に登場するタイミングがなかっただけなのかもしれませんので、今は深読みせず注意を喚起する程度に留めておきますが、もしこの先もずっと「商店街の東口が存在しないものとして描かれる」のであれば、それは何らかの演出上の意図に沿って空間設計されていると考えるべきであり、その意味合いはかなり重要なものになると思います*4。
第2話以降に注目したいところです。
【解説3】 学校はどこにあるのか?通学手段は徒歩か電車か?
【解説2】にも関わる話ですが、たまこ達の通う学校はモデルとなった京都聖母学院高校と同じ場所(藤森)なのでしょうか?そうではないのでしょうか?あるいは通学手段は徒歩でしょうか電車でしょうか?それを推察する"鍵"が第1話の中にあります。
これはBパートの体育館内のカットで朝霧史織さんの着用しているジャージです。背中に「USAGIYAMA(うさぎ山)」と学校名が書かれています*5。これを見れば、商店街と学校は共に「うさぎ山」と呼ばれる同一地域内にあり、恐らくその距離は比較的近いということが窺えます。ちなみに出町柳から藤森までは京阪電車一本で行けるものの、各駅停車で約17~18分かかるのでとても同じ地域とは言えません(余談ですが、同じ京都市内にあっても伏見はまた別の文化を持つ地域です)。
第1話アバンの冒頭に登場する橋は、京阪電車藤森駅の東側にあります。この橋を手前に渡ってきて川(疏水)沿いを歩いているたまこ達が、次の瞬間には商店街の西口に来ています。
当初、これは電車通学のシーンをカットしたのだろうかとも思いましたが、そもそも疏水沿いを北上している時点で藤森駅を通り過ぎている訳ですし、先に挙げたジャージの背中の学校名や、商店街への帰宅時に南方面へ向かって歩いていたこと等を考え合わせると、学校の所在地は商店街の東もしくは東南東辺りで、現実の聖母学院高校のある場所を出町柳の東側くらいに移動させて両者をムリヤリ接合させているというのが私の予想です。場所(place)モデルと建物(architecture)モデルは同じでも、空間(space)モデルは大胆にデフォルメされているとでも言えば良いのでしょうか。これは例えば『けいおん!』の桜ヶ丘高校の場所モデルは京都造形芸大であっても、劇中の描写は白川通北山から造形大周辺までの距離をぐっと圧縮して空間設計されていることによく似ています*6。
こちらも第2話以降に要注目ですね。
【解説4】 アバンからAパートまでのたまこの足取りをたどる
【解説3】で述べたように、たまこは下校時に橋を渡って疏水沿いを歩いて商店街の西口に来ます。この後、彼女は商店街の色々なお店で買い物をしながら帰宅する途中で鳥(デラ)と出逢ってしまうのですが、そもそもこの時のたまこの動きは一体どのようなものだったのでしょうか?これは出町桝形商店街の該当店舗の場所を把握していないとイメージしづらいと思いますので、商店街の西口で3人が別れた後、たまこが家に辿り着くまでの足取りを地図上で具体的に追ってみることにします。
図にすると以下のようになります。丸で囲った各番号は後述する項番です。
画像をクリックして「オリジナルサイズを表示」をクリックすれば拡大版をご覧になれます。
これを見ると、たまこが商店街の中をウロウロと行ったり来たりしていることがよく分かります。最初にPVを見た時、下記の項番06でコロッケを頬張っているたまこの位置と肉屋の「ジャストミート」の場所との食い違いが不思議で仕方なかった(店に向かう前にコロッケを買っている!)のですが、一旦「トキワ堂」に立ち寄ってからUターンして戻って来たということが分かってようやく合点がいきました。
項番 記事番号 場所(状況)
01 【舞台探訪】06: 商店街西口(3人別れる)
02 【舞台探訪】12: 魚屋「さしみ」("さんまください")
03 【舞台探訪】13: 豆腐屋「清水屋」("もめんを二丁")
04 【舞台探訪】14: 肉屋「ジャストミート」("あっげたて、あっげたて")
05 【舞台探訪】15: 玩具屋「トキワ堂」(けん玉)
06 【舞台探訪】16: リビングショップ「いつもの」前あたり(コロッケ頬張る)
07 【舞台探訪】24: 花屋「フローリストプリンセス」(鳥と出会う)
08 【舞台探訪】26: 喫茶「星とピエロ」→「からあげ」前("なんで乗られてんだろう")
09 【舞台探訪】27: 鯖の下あたり("飼ってないよー")
10 【舞台探訪】28: 再び「トキワ堂」(けん玉を鳥に邪魔される)
11 【舞台探訪】29: 本屋「BOOKSひなぎく」(本を買う)
12 【舞台探訪】31: 鯖の下の十字路を右へ曲がって自宅方面へ
13 【舞台探訪】32: 自宅前(父親同志の喧嘩)
それにしても、たまこの行動パターンはよく分かりません。なんで、さんまと木綿豆腐二丁と揚げたてのコロッケを買い込んでおきながら、おもちゃ屋に遊びに行って、更に戻ってきて花屋へ行ったのでしょう?不思議な娘です。
【余談】
「星とピエロ」のモデルである「BAR華波様楽」さんへの取材訪問の直前、商店街のアーケードの上から『たまこまーけっと』のポスターが吊り下げられる現場に遭遇しました(1/11夜)。
作業でお忙しいにも関わらず、ご厚意で写真を撮影させて頂くことが出来ました。ありがとうございました。
「一点透視図法」による騙し絵のような世界。アニメの世界を現実で体感しているのか、現実の中にアニメの世界が紛れ込んできたのか。ちょっと不思議な感覚でした。
ポスターの中に描かれた商店や鯖のオブジェが目の前にある不思議。出町桝形商店街へお越しの際は、ぜひ宙を見上げて確認してみて下さい。この連休中に「ファン交流ノート」も置かれるようになりました。
(2013/1/15 記)
当記事に掲載した『たまこまーけっと』の画像は、著作権法第32条に定める比較研究を目的としての引用であり、当該画像の著作権は全て、京都アニメーション/うさぎ山商店街に帰属します。